精選版 日本国語大辞典 「下髪」の意味・読み・例文・類語
さげ‐がみ【下髪】
- 〘 名詞 〙
- ① 女性の髪形の一つ。髪を背後に垂れ下げておくか、あるいは髻(もとどり)で束ねて、背後に垂れ下げた形をいう。鎌倉時代から、かもじを使用し、元結で結ぶようになった。さらに近世、宮中女官からはじまって前髪を横に張らせた形になり、大名の夫人や宮女などが祝い日に結った。
- 下髪①〈女重宝記〉
- [初出の実例]「上郎衆の、十二ひとへをめして、さげかみは地三尺ばかりひきづり」(出典:虎明本狂言・金岡(室町末‐近世初))
- ② 芝居で使う女形のかつらの一つ。髷(まげ)に結わないで毛を後ろに垂れ下げたもの。武家の奥方などの役に使う。
- [初出の実例]「明暦二年丙申。其頃は京は女形のさげ髪(ガミ)は法度にて有しに」(出典:役者論語(1776)芸鑑)
下髪の語誌
( 1 )平安時代の絵巻物に見えるような、黒髪を真ん中分けにしてただ長く曳いたり、その髪を腰のあたりで束ねたりした髪形である「垂髪(すいはつ)」とは区別する。
( 2 )女性が下げ髪の原型を結うようになったのは厳密には平安期で、当時貴族の女性の間で垂髪が一般的であったのに対し、庶民の間ではより活動に適した下げ髪が行なわれていた。
( 3 )鎌倉期から桃山期にかけては、貴族間の垂髪も背で束ねることが普通となる一方で、庶民や武家女性の間では、より活動に適したのちの髷の原型ともいえる、髪を高い位置でまとめた髪形が行なわれて江戸期女性の髪形の基本となった。