不利益変更の禁止(読み)フリエキヘンコウノキンシ

デジタル大辞泉 「不利益変更の禁止」の意味・読み・例文・類語

ふりえきへんこう‐の‐きんし〔フリエキヘンカウ‐〕【不利益変更の禁止】

民事訴訟上訴審で、原判決を上訴人の不利益になるように変更できないこと。民事訴訟法で、口頭弁論当事者が原判決の変更を求める限度においてのみ行い(296条)、原判決の変更は不服申し立ての限度においてのみ行う(304条)と規定しているため、原則として原判決を上訴人の不利益になるように変更することはできない。
刑事訴訟の上訴審で、検察側が上訴せず、被告人側が上訴した場合、原判決の刑より重い刑を言い渡すことができないこと。刑事訴訟法402条、414条の規定による。検察側が上訴した場合は、原判決より重い刑が科される可能性もある。
生活保護を受ける人が、正当な理由なく、すでに決定した保護を不利益に変更されないこと。生活保護法56条の規定による。
使用者が労働者と合意することなく就業規則を変更し、労働者に不利益になるよう労働条件を変更することはできないこと。労働契約法9条の規定による。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の不利益変更の禁止の言及

【行政不服審査】より

…また,同法にいう行政庁の不作為についても不服申立てを認め,審査請求または異議申立てのいずれかをすることができるものとしている。そして,書面審理を原則としながらも,不服申立人等に口頭で意見を述べる機会を認めるなど,不服申立人等の手続的権利を保障し,さらに,不服申立ての対象である処分等を不服申立人に不利益に変更することを禁じる〈不利益変更の禁止〉を明文で規定し,また,国民が行政不服審査制度を活用できるよう,教示制度(処分をするにあたり,その処分につき不服申立てができることや不服申立てをすべき行政庁等を処分の相手方に示すこと)を導入している。 しかし,行政不服審査法のもとでは,不服審査を行うのは,第三者的機関ではなく,原則として,処分等を行った行政庁,もしくは不作為に係わる行政庁,またはそれらの行政庁の上級行政庁であり,また,改善されたとはいえ,不服申立人等の手続的権利の保障もいまだ十分とはいえないところから,国民が公正な審理,判断による権利利益の救済をどこまで期待することができるかは,なお問題のあるところである。…

【控訴】より

…309条)することもある。なお控訴裁判所が第一審判決を取消変更する場合,それは控訴人の不服申立ての限度でなされ(304条),職権で裁判できる事項を除き,相手方の控訴または付帯控訴がない限り,控訴人にとって第一審判決よりも不利に裁判することはできないし(不利益変更の禁止),また控訴人が不服申立てにより求めている以上に有利に裁判することもできない。控訴がなされると第一審判決の全部の確定が妨げられるが,実際に審判がなされるのは当事者の不服申立ての限度においてであるから,第一審判決中当事者のいずれからの不服申立ての対象にもなっていない部分については,控訴裁判所は申立てに基づいて仮執行の宣言をすることができる(294条)。…

【上訴】より

…もっとも,このような類型によって上訴審の手続のすべてが決まるわけではない。 一方の当事者のみが上訴を申し立てたとき,上訴審では原判決よりも申立人の不利になる裁判をすることはできない(〈不利益変更の禁止〉)。ただし,刑事訴訟では,この原則は,被告人側の上訴にだけ適用されるので,検察官が上訴を申し立てたときには,被告人上訴の有無にかかわらず,どちらの方向にも裁判内容を変更することができる。…

※「不利益変更の禁止」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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