世紀末芸術(読み)せいきまつげいじゅつ(その他表記)l'art du fin de siècle

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「世紀末芸術」の意味・わかりやすい解説

世紀末芸術
せいきまつげいじゅつ
l'art du fin de siècle

通常 19世紀ヨーロッパの世紀末における特異な芸術的傾向をさす言葉。この時期,ヨーロッパでは諸科学や文化が未曾有の発展をとげた。科学万能主義,合理主義が幅をきかせる一方で,人々はめまぐるしい環境の変化に漠とした無常感や自己喪失を感じ,F.ニーチェなどの厭世哲学共感をもって受入れられた。こうした兆候が最も顕著に表面化し,独特の世紀末芸術を生み出したのがフランスであり,パリが芸術の都として国際的な名声を得るにいたったのもこの時期である。退廃的美学を指向する「デカダンス」,文学上の運動から造形芸術へ浸透していった「象徴主義」,日本などの東洋美術,中世写本装飾ロココ美術などさまざまな装飾要素を統合し,動植物にみられる有機的な曲線主体にした線描芸術の「アール・ヌーボー」などがある。

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