改訂新版 世界大百科事典 「両浙」の意味・わかりやすい解説
両浙 (りょうせつ)
Liǎng zhè
中国の歴史的広域地名。浙江省の北部を流れる浙江(銭塘江)の両岸,浙東と浙西の総称。浙東・浙西の行政上の区別は唐代中期の節度使の領域にはじまり,浙東は今の浙江省の浙江以東(治所は紹興),浙西は浙江以西,長江(揚子江)の南まで至る地域(治所は蘇州,鎮江,南京,杭州などを転々とした)を管轄した。宋にはこれが統合されて両浙路とされ,南宋には再び両浙東路・両浙西路に二分された。明代に後者が南京を中心とした南直隷に組み入れられると,行政区画としての両浙は消失したが,長期にわたって培われた地域性は残存した。特に明・清時代に両地域に生まれた学術文化の性格の差は,同じ江南でありながら大きく,つねに経済文化の中心にあって華美であっても一面退廃的になりがちであった浙西に対し,浙東は質朴を尊び,また強い実践への意欲をもった。清代の考証学においては黄宗羲(こうそうぎ),万斯同(ばんしどう),全祖望らが浙東に輩出し,浙東学派と呼ばれる。この地域性の差は,古くさかのぼれば呉・越の文化の差に起源をもとめることができる。
執筆者:秋山 元秀
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報