朝日日本歴史人物事典 「中村喜時」の解説
中村喜時
生年:元禄末年
江戸中期,北限の近世農書の著者。陸奥国(青森県)東光寺村の庄屋に生まれる。生家は水田1000人役(約70ha)を所持し,10組以上の夫婦仮子や多数の奉公人をかかえた家父長制的農業経営を行っていた。18歳で家業を継ぎ,晩年は居住地を堂野前村に移し,稲作講話会を主宰して農家の指導に当たった。「老人噺けるは」という書き出しで始まる著名な『耕作噺』(1776)は,彼が指導した農事の要点や質疑応答の内容を談話形式でまとめた著作であり,当時における寒冷地稲作の実状を忠実に伝えている。<参考文献>稲見五郎「『耕作噺』解題」(『日本農書全集』1巻)
(佐藤常雄)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報