日本大百科全書(ニッポニカ) 「中欧自由貿易協定」の意味・わかりやすい解説
中欧自由貿易協定
ちゅうおうじゆうぼうえききょうてい
Central European Free Trade Agreement
略称CEFTA。中欧の旧社会主義諸国で構成される自由貿易協定。1989年の政治変動後、ポーランド、チェコスロバキア、ハンガリーはソ連軍の撤退問題など安全保障問題で提携し、91年の首脳会談が行われた地名からこれらの諸国は「ビシェグラード諸国」とよばれるようになった。しだいに政治的協力は後退するが、92年末にこの3国は段階的に関税を撤廃し、自由貿易地帯を形成することを目ざす中欧自由貿易協定に調印した。共産党体制崩壊後のコメコン(経済相互援助会議)解体で減少した相互貿易の回復が目的とされ、93年のチェコとスロバキアの分離後もこの経済協力は継続し、95年にはスロベニアがこれに加盟した。貿易の拡大では一定の成果はみられたが、農業製品の関税撤廃などでは足踏みが続いた。新しい地域協力の形として注目されたが、いずれの諸国もNATO(ナトー)(北大西洋条約機構)とEU(ヨーロッパ連合)への加盟を目標としていたため、これらの国の指導者たちの間では、この協力は過渡期的なものとみなす傾向があった。97年には、ポーランド、チェコ、ハンガリーの3か国がNATO加盟交渉を開始し、99年3月に正式に加盟、スロバキア、スロベニアも2004年に加盟した。また各国ともEUとの加盟交渉を進め、それぞれ2004年5月に加盟が実現した。
[林 忠行]