改訂新版 世界大百科事典 「中毒性精神病」の意味・わかりやすい解説
中毒性精神病 (ちゅうどくせいせいしんびょう)
toxic psychosis
アルコールやその他の嗜好品,薬物,工業用化学物質,毒キノコなどをみずからの意志でまたは誤って,不当にまたは大量に体内に入れたために起こる精神障害を一括していう。一般には急性の身体反応を伴う一過性精神障害で,身体症状のいかんにかかわらず意識障害を中心症状とする。その意識障害の程度によって躁うつ状態から幻覚・妄想状態なども加わることがある。この状態は身体疾患を基礎にもつ精神障害の症状精神病(外因反応型)と共通する。アルコールの急性中毒,睡眠剤・揮発性溶剤中毒などは最も多い。都市ガスによる一酸化炭素中毒,農薬中毒,急性毒キノコ中毒などもこれに属する。マリファナ(大麻)やLSDなどの幻覚剤の大量使用,覚醒剤の大量使用では,意識障害は軽いが幻覚・妄想状態が出現する。みずからの意志による薬物の乱用が持続すると,薬物依存症(さらにはその精神病)に発展することがあるが,薬物中断による離脱症状として急性精神病が生ずる。アルコール精神病はその代表である。
執筆者:加藤 伸勝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報