二次性高血圧の診断と治療

  • 二次性高血圧の診断と治療(血圧の異常)

内科学 第10版の解説

1)二次性高血圧の分類
 高血圧は原因不明とされている本態性高血圧と原因が明らかな二次性高血圧に分類される.
 二次性高血圧(secondary hypertension)は表6-3-1に示すように分類されている.表6-3-1をみてわかるようにさまざまな臓器が関連している.また近年遺伝性高血圧も責任遺伝子が次々と明らかにされている(表6-3-2).
2)腎実質性高血圧
定義
 腎実質性疾患に伴って生ずる高血圧.従来二次性高血圧のなかで,腎実質性高血圧とされてきたもののなかで代表的な疾患として,糸球体腎炎(わが国では90%近くがIgA腎症),腎硬化症,多発性囊胞腎,それに糖尿病腎症があげられる.
病態生理
 血圧調節に腎臓が重要な役割を果たしていることはいくつかの重要な機構により説明されている.その重要な機構は,大きく分けて3つの要素が想定されている.水・ナトリウム代謝,腎交感神経,糸球体高血圧である.もちろんこれ以外にも多くの要因があげられているが,腎実質性高血圧ではこの3つが大きい要素とされている.
1)水・ナトリウム代謝
: 腎臓に異常がない場合,腎臓は血圧を上昇させることなくNaを排泄できる(圧・ナトリウム利尿).腎臓に何らかの障害を生じると血圧を上昇させることによって摂取したNaを排泄できるようになる.
2)腎交感神経
: 腎臓に障害を生じると腎交感神経活性が亢進し,その結果レニン-アンジオテンシン-アルドステロン(rennin-angiotensin-aldosterone:RAA)系が亢進し,同時に腎臓での水・Na再吸収が亢進する結果血圧が上昇する.
3)糸球体高血圧
: 糸球体内圧は全身血圧が上昇しても通常は50 mmHg前後に保たれている.しかしアンジオテンシンⅡが輸出細動脈に強く作用すると糸球体内圧は上昇し,その結果糸球体過剰濾過が起こり(Brenner過剰濾過説),その結果一部のネフロンが硬化に陥り,これが繰り返される結果血圧が上昇する(nephron heterogeneity説・Laragh).さらにこれに加えて,尿細管糸球体フィードバック機構に異常を求める説や圧・ナトリウム利尿とホルモンとを合わせた説などが提唱されている.
 以上のさまざまな説が腎障害時には提唱されているが,基本はナトリウム(塩)の代謝異常が腎実質性高血圧の主体と考えてよい.
診断
 診断についてはそれぞれの腎疾患の項を参照.
治療
 基本的には食事療法(減塩,減蛋白)と降圧治療が中心となる.減塩,減蛋白に関してはどのステージでどの位にすればよいのかいまだ議論がある.降圧治療はレニン-アンジオテンシン阻害薬を中心として130/80 mmHg未満にすることが求められている(詳しくは【⇨11-2】 慢性腎臓病).
3)腎血管性高血圧
定義
 腎動脈の狭窄が原因で腎臓に虚血が起こり高血圧となる疾患である.腎動脈の狭窄があるからといって必ずしも高血圧を生じるとは限らない点には注意を要する.頻度としては,二次性高血圧の10%近くを占めると推定されている.
分類
 中・高年者では粥状動脈硬化による狭窄が,若年者,特に女性では線維筋性異形成がそれぞれ主たる成因とされている(前者では腎動脈の基始部に,後者では中遠位部に病変がみられる).それ以外には腎動脈病,高安病,大動脈解離などの原因があげられている.
病態
 腎血管性高血圧は腎動脈の狭窄により腎臓での虚血が生じレニンの合成分泌が高まり,アンジオテンシン,アルドステロンが増加する.それに伴いナトリウム貯留が生じる.一方アンジオテンシンⅡによる血管収縮により血圧が上昇する.さらにこれが血管自体に障害を引き起こしたり,また心臓にも大きな影響を与えている(図6-3-1).
診断
 表6-3-3に診断の手掛りとなる病歴および身体所見を示した.このなかでも腹部血管雑音で特に収縮期,拡張期にわたり聴取される場合には診断的価値が高い.臨床検査所見としては血漿レニン活性の高値,低カリウム血症,軽度の血清クレアチニン値の上昇,中等度の蛋白尿などがあげられる.
 腎血管性高血圧が疑われたらスクリーニング検査として以下の4つを行う.①レノグラムでは狭窄側の腎臓での,ⅰ)取り込みが少なくなり,ⅱ)取り込みが遅れる,ⅲ)排出にも時間がかかる.特にカプトプリル50mg負荷で,狭窄側では糸球体濾過量がさらに減少し,非狭窄側では増加する.②超音波Bモード法により血流を計測する. 腎動脈の血管造影が現在でも診断のゴールドスタンダードであるが,糖尿病や腎機能障害がある場合には腎機能障害がさらに進行する場合があり,造影剤の使用は慎重に行われるべきである.
治療
 治療には3つの選択がある.
1)薬物治療:
ACE阻害薬あるいはARBを用いて降圧を行う.
2)血管形成術:
カテーテルを用いて腎動脈の狭窄部位の拡張を行うもので,線維筋性異形成に対しては成功率が高いが,粥状硬化症に関してはあまり推奨されない.
4)内分泌性高血圧
 内分泌性高血圧は内分泌臓器の腫瘍あるいは過形成によるホルモン過剰により,高血圧をきたす疾患群を総称している.
(1)
原発性アルドステロン症
定義
 副腎の腫瘍(腺腫)もしくは過形成により,アルドステロンが自動能を有して過剰に産生されることによりもたらされる症候群である.30歳から50歳にかけて多くみられ,女性にやや多い.
頻度
 高血圧の3~10%といわれている.
病態
 図6-3-2に示すようにアルドステロンの過剰分泌が起こり,その結果Na貯留により容量が増加する.一方容量の増加により血圧が上昇する結果,圧・Na利尿が生じ,いわゆるエスケープ現象が生じ浮腫は生じない. 一般に腺腫の患者ではアルドステロン産生はACTHにより依存しており,したがって朝方のアルドステロンは高く昼間は低くなる傾向がある.一方,過形成ではレニン-アンジオテンシン系に依存することが多く,立位によってアルドステロンは上昇する傾向がみられる.
診断への手順
 二次性高血圧の中でも頻度が多いので,すべての高血圧で疑う必要がある.表6-3-4にその手掛りをあげた.
 原発性アルドステロン症が疑われたら図6-3-3に示す手順で検査を進める.原発性アルドステロン症が疑われた場合,アルドステロン/レニン比を測定する.もし降圧薬を中止した条件下で200をこえているときには,カプトプリル負荷もしくは生食負荷試験のいずれかを行い,さらにCT(computed tomography)スキャンを行い副腎の形態を確認する.もし画像診断で副腎の形態が正常である場合にはグルココルチコイド奏効性アルドステロン症も考慮する.
治療
 片側の原発性アルドステロン症は腹腔鏡下副腎摘出術が第一選択である.両側もしくは手術が不可能な例においてはアルドステロン拮抗薬(スピロノラクトンあるいはエプレレノン)が第一選択薬となる.
 腫瘍摘出後一過性に血圧の下降は緩徐であるが,低アルドステロン症となる結果逆に高カリウム血症が生じることがあり注意が必要である.
(2)Cushing症候群
定義
 コルチゾールの過剰により約80%に高血圧がもたらされる.1つは内因性に1つは外からのステロイドの投与により引き起こされる.内因性にはACTH依存性と非依存性のものがある.ACTH依存性のものはCushing病で下垂体の微小腫瘍からのACTHの過剰分泌が副腎の過形成を起こすタイプと,異所性にACTHを腫瘍が分泌するタイプがあり,後者としては肺小細胞癌が最も多い.ACTH非依存性は副腎良性腫瘍もしくは癌による.
診断
 診断は比較的容易で特異な身体所見として,中心性肥満,満月様顔貌,野牛様脂肪沈着,赤色皮膚線条,皮膚の菲薄化,多毛,座瘡などがある.高血圧,糖尿病,脂質異常症,尿路結石が認められる.低カリウム血症,好酸球減少が検査所見で認められる.
病態
 Cushing症候群の高血圧上昇機序には,①ナトリウム貯留,②NO産生の低下,③レニン系の関与などが想定されているが明確には判明していない.
最終診断
 コルチゾール過剰が何によってもたらされているかは,血中コルチゾールとACTH,尿中遊離コルチゾールの測定,デキサメサゾン抑制試験,CRH負荷試験などにより鑑別し,CTおよびMRI検査により病変部位を推定する(詳細は【⇨12-2-10)Cushing症候群】).
治療
 原因病巣の外科的摘出が第一選択となる.
(3)副腎性サブクリニカルCushing症候群
 副腎偶発腫瘍と称されている定期健康診断などにより偶然に見出される副腎腫瘍がある.これは一般にCushing徴候といわれる特異な身体所見は認められず血中コルチゾール値は正常で,デキサメタゾン1 mg一晩法でコルチゾールの抑制がみられない一群の症候群と定義され,高血圧,耐糖能異常を伴うことが多い.現時点では摘出術が推奨されている.
(4)褐色細胞腫
定義
 褐色細胞腫は副腎髄質に生じる副腎原発腫瘍と脊髄に沿った傍神経節に生じる副腎外腫瘍の2つがあり,自律性をもって分泌されるカテコールアミンの過剰により高血圧を生じる.
臨床症状
 古来より褐色細胞腫は「疑いの疾患」とされ,高血圧も発作性に上昇する場合(50%)と,持続的に血圧が上昇している場合(約30%)がある.この血圧上昇以外に,動悸,頭痛,発汗,不安感,蒼白,振戦などの多彩な症状がみられる.その中で,肥満の褐色細胞腫はいないといわれている.また10%の法則として,副腎外,両側,悪性,家族性,小児がそれぞれ10%にみられる.
診断
 生化学的にまず検索を行い,ついで画像診断で確定する. スクリーニング検査としては尿中メタネフリンの測定が最も特異性が高いとされている.尿中メタネフリン値が1.2 mg/24時間以上で疑いがもたれ,24時間尿中メタネフリン分画が240 μg以上でさらに強く疑われる.血中カテコールアミン値は簡便であるが特異度は低いとされている.
 画像診断ではまず局在を確認する目的でメタヨードベンジルグアニジン (131I-MIBG)シンチグラムが用いられている.褐色細胞腫はMRIのT2強調画像で,高信号を呈する.
治療
 腫瘍摘出が原則であり,術前にα1遮断薬を投与し,不整脈や頻脈のある場合にはβ遮断薬も投与する(β遮断薬の単独投与はα作用が増強されるため禁忌である).
 高血圧クリーゼにはフェントラミンを点滴静注する.
(5)その他の原因によって起こる二次性高血圧
1)睡眠時無呼吸症候群:
肥満に伴ってみられることが多いが,無呼吸症候群では70%近くに高血圧が認められ,しばしば治療抵抗性の高血圧とされている.確定診断は睡眠ポリソムノグラフィ検査で行う.治療として減量療法や持続陽圧呼吸療法(CPAP)を行う.
2)大動脈縮窄症:
Turner症候群にしばしば合併するが,一般には孤発性に起こるとされている.小児期の手術により治療されているが,高血圧には残ることがあり,心血管系疾患に,成人になって罹患することもあるので注意が必要である.診断は上下下肢の血圧差が大きい場合に疑われ心臓超音波検査でほぼ確定診断が可能である.
3)甲状腺機能亢進もしくは低下症:
いずれの場合にも血圧が上昇する場合がある.亢進症では心拍出量と脈拍数の増加,末梢血管抵抗の低下などにより高血圧が,低下症では体液量の増加により高血圧がもたらされると考えられている.
4)先端巨大症:
成長ホルモン産生下垂体腺腫が原因で40%に高血圧を認めるとされている.
5)副甲状腺機能亢進症:
しばしば高カルシウム血症に伴って高血圧が認められる.
(6)薬剤誘発性高血圧
 薬剤の中にはしばしば高血圧を誘発するものがあり注意が必要である.
 非ステロイド系抗炎症薬はプロスタグランジンの産生を抑制して水・Na貯留と血管拡張作用の減弱で血圧上昇をきたす.
 甘草の主成分であるグリチルリチンは腎臓での11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ活性阻害を起こし,それによりコルチゾールがコルチゾンに代謝されなくなり,コルチゾールがミネラロコルチコイド受容体に結合し,偽性アルドステロン症を起こすとされている.
 一般にグルココルチコイドでは血圧の上昇をきたすことは少ないが,大量では上昇させる.
 シクロスポリン,タクロリムスは交感神経活性亢進や血管内皮細胞傷害で血圧上昇をきたすとされている. ベバシズマブも血圧上昇と蛋白尿をきたすことがあるとされている.
(7)遺伝子関連の高血圧
1)17α-水酸化酵素欠損症:
17α-水酸化酵素欠損症では性ホルモンとコルチゾールの産生が低下する.その結果男性では半陰陽が,女性では無月経,二次性徴の欠如が起こる.コルチゾール産生低下はACTH産生を促し,ほかの副腎でのステロイド産生が刺激される結果高血圧と低カリウム血症が起こる.
2)11β-水酸化酵素欠損症:
コルチゾールの合成が低下しミネラルコルチコイドの活性を有するデオキシコルチコステロンが増加し高血圧を起こす,またアンドロゲンの産生増加に伴い性徴にさまざま変化を引き起こす.
3)11β-水酸化脱水素酵素欠損:
コルチゾールをコルチゾンに変化する役割を果たすこの酵素が欠損する結果,コルチゾールが増加し,それがアルドステロン受容体に結合し,高血圧と低カリウム血症を起こす.[鈴木洋通]
■文献
Abboud H, Heinrich WL: Clinical Practice: Stage IV chronic kidney disease. N Engl J Med, 362: 56, 2010.
Garovic V, Textor SC: Renovascular hypertension and ischemic nephropathy. Circulation, 112: 1362, 2005.
Funder JW, et al: Case detection, diagnosis, and treatment of patients with primary aldosteronism: an endocrine society clinical practice guideline. J Clin Endocrinol Metab 93: 266, 2008.
Neiman LK, et al: The diagnosis of Cushing’s syndrome: an endocrine society clinical practice guideline. J Clin Endocrinol Metab 93: 1526, 2008.
Lenders JW et al: Pheochromocytoma. Lancet 366: 665, 2005.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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