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腎硬化症 じんこうかしょう nephrosclerosis

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

腎硬化症
じんこうかしょう
nephrosclerosis

腎血管の動脈硬化による疾患で,血流障害の結果,腎が硬化した状態をいう。動脈硬化性と細動脈硬化性とがある。臨床上は良性と悪性とに分けられる。良性腎硬化症は細動脈性で,本態性高血圧と同意語といってよい。

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出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉の解説

じんこうか‐しょう〔ジンカウクワシヤウ〕【腎硬化症】

高血圧の影響で腎臓に動脈硬化が起こって小さく硬くなり、腎機能が衰える病気。

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監修:松村明
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家庭医学館の解説

じんこうかしょう【腎硬化症 Nephrosclerosis】

◎腎臓が硬く小さくなる病気
[どんな病気か]
[原因]
[検査と診断]
食事療法薬物療法が基本
[治療]
[日常生活の注意]

[どんな病気か]
 本態性高血圧症(ほんたいせいこうけつあつしょう)(原因のわからない高血圧症)にともなっておこる腎臓の病変を腎硬化症と呼びます。腎臓の表面のほぼ全体に小さなつぶつぶができ、腎臓自体は硬く小さくなるので、この病名がつきました。
 腎臓内の細小(さいしょう)動脈の内膜(ないまく)や中膜(ちゅうまく)に線維組織が増え、肥厚(ひこう)します。ついで、内膜にガラスのような(硝子様(しょうしよう))物質が付着して、動脈硬化をおこし、内腔(ないくう)が狭くなります。そのため、糸球体(しきゅうたい)に流れる血液が減少して、糸球体に隣接する傍糸球体装置(ぼうしきゅうたいそうち)という組織からレニンが分泌(ぶんぴつ)されます。
 レニンは、肝臓から分泌されるアンギオテンシノーゲンをアンギオテンシンⅠにかえます。ついで、アンギオテンシン変換酵素(へんかんこうそ)という物質が、アンギオテンシンⅠをⅡにかえます。このアンギオテンシンⅡは、末梢(まっしょう)の血管を収縮させ、副腎(ふくじん)からアルドステロンというホルモンの分泌をうながします(レニン‐アンギオテンシン‐アルドステロン系)。このホルモンは血漿(けっしょう)を増やすので、血圧が上がります。するとそのため、さらに腎臓の機能がそこなわれるといった、悪循環がおこります。
 こういう高血圧の状態が長期(10~20年)にわたると、腎臓の動脈硬化が進み、たんぱく尿が出たり、血尿(けつにょう)が出たりして、最終的には腎臓のはたらきが失われます(腎不全(じんふぜん))。
 しかし、本態性高血圧症が初期の段階からコントロールされていれば、腎不全に進行することはありません。
■良性腎硬化症(りょうせいじんこうかしょう)(良性本態性高血圧症(りょうせいほんたいせいこうけつあつしょう))
 良性腎硬化症は、高血圧の影響で、腎臓の細小動脈の病変が何年もかかってだんだん進むもので、腎硬化症のほとんどは、このタイプです。
 良性腎硬化症は、本態性高血圧症のある中年以上の人に多くみられ、高血圧と尿の異常(たんぱく尿や血尿)で見つかることが多い病気です。
 進行すると腎不全をおこします。
■悪性腎硬化症(あくせいじんこうかしょう)(悪性本態性高血圧症(あくせいほんたいせいこうけつあつしょう))
 悪性腎硬化症は、発病から急激に悪くなり、拡張期(最低)血圧は130mmHg以上になります。腎臓の血管の障害がひどく、壊死(えし)(一部の細胞や組織が死ぬこと)をおこす血管炎がみられます。こうした壊死性血管炎だけでなく、糸球体の線維化、硬化による壊死(類線維素壊死(るいせんいそえし))がみられると、悪性腎硬化症と診断されます。
 放置すると、腎臓をはじめ、脳や心臓の血管に障害をおこし、1、2年以内に死亡することが多い病気です。比較的若い年齢(30歳代)で発病することが多いのも特徴です。

[原因]
 最近の研究では、高血圧は複数の遺伝子によって決定された体質(高血圧になりやすい体質)に、食塩のとりすぎやストレスなど、環境の影響も加わって発病する、多因性遺伝疾患(たいんせいいでんしっかん)ということがわかりました。しかし、その原因遺伝子を含めた病因は、まだはっきりとはわかっていません。
●高血圧と遺伝子
 自然に高血圧になるラットや、食塩を与えると血圧が上がりやすいラットの遺伝子を調べた結果、高血圧体質をつくっているらしい遺伝子の候補が十数種類見つかってきました。
 たとえば、アンギオテンシン変換酵素の遺伝子は、ラットでは第10染色体(ヒトでは第17染色体の長腕)にあると報告されています。
 ちなみに、この酵素のはたらきを阻害してアンギオテンシンⅡができなくする薬をアンギオテンシン変換酵素阻害薬(そがいやく)といい、降圧効果があります。
 また、ラットでは、食塩抵抗性遺伝子(食塩を与えても高血圧になりにくい)や、逆に食塩感受性遺伝子(食塩を与えると容易に高血圧になる)など、環境との関連で血圧を調節する遺伝子があることがわかっています。
 また、一連の昇圧遺伝子に対抗する降圧遺伝子も見つかっています。
 ヒトの本態性高血圧症に関連する遺伝子も報告されており、これらの遺伝子の相互作用や変異と、食塩のとりすぎやストレスなどの環境のプレッシャーが互いに影響して、高血圧が発病すると考えられています。
●高血圧と食塩摂取
 本態性高血圧症をうながす環境要因として、もっとも重要なのは食塩の摂取ですが、食塩のとりすぎで、すべての人が高血圧になるわけではありません。ラットの食塩感受性遺伝子にあたるものは、ヒトではまだはっきりしていませんが、ヒトでも食塩の摂取で血圧が上がりやすく、減塩食や利尿薬で容易に血圧が下がる場合(食塩感受性高血圧群)と、食塩を摂取しても血圧の上昇が軽度で、減塩食や利尿薬に反応しない場合(食塩非感受性高血圧群)があることがわかっています。

[検査と診断]
 腎硬化症は、良性と悪性の2つに診断されます。
 良性腎硬化症の場合は、軽度から中等度の高血圧が長く続きます(図「日本高血圧学会の定義」)。そのため、頭痛や動悸(どうき)などの自覚症状があります。軽い心臓の肥大や心音(Ⅱ音)の高まりがみられ、眼底(がんてい)にも高血圧による細動脈(さいどうみゃく)の狭小化、動静脈交差現象(網膜(もうまく)の細動脈と細静脈(さいじょうみゃく)の交差部で静脈が動脈をコの字状に迂回したり、先細りになったりすること)がみられます。
 尿は軽いたんぱく尿となり、沈殿物中に赤血球(せっけっきゅう)や硝子円柱(しょうしえんちゅう)という変形した細胞などが現われます。
 血液検査では、とくに異常はありません。糸球体が血液を濾過(ろか)する能力は正常範囲内にあり、腎臓での血液中の水分調節力(濃縮力や希釈力)の障害もごく軽度です。
 悪性腎硬化症の場合は、拡張期血圧が130mmHgを超えることが多く、脳内の圧力が高まって、頭痛、耳鳴(みみな)り、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)などが現われます。出血やうっ血乳頭(けつにゅうとう)などの眼底変化をともない、視力障害もおこります。また、動悸など、心臓の症状もみられます。
 尿検査では、たんぱくがみられ、沈殿物中には赤血球、白血球(はっけっきゅう)、円柱細胞などがみられます。心電図やX線検査で心臓の肥大がみられます。尿素窒素(にょうそちっそ)、クレアチニン、尿酸の値が異常に上昇し、カリウム、ナトリウム、カルシウムなど体液に含まれる電解質の値も異常で、腎臓障害はあきらかです。
 血漿中のレニンの値は、ほとんどの場合、上昇しますし、副腎(ふくじん)ホルモンであるアルドステロンの値も上昇します。

[治療]
 本態性高血圧の治療が、そのまま腎硬化症の治療になります。血圧が非常に高く、危険と考えられる場合以外は、通院治療が原則です。
 一般的な治療としては、減塩や低たんぱく食の食事療法が中心となります。
 減塩療法は、軽度から中等度の腎臓障害では、1日6g以下に食塩摂取量を制限します。これは、加工食品に含まれる食塩や調理に使う量で、食品素材に含まれる塩分は別です。
 高度の腎障害(尿毒症(にょうどくしょう))では、たんぱく質の摂取量も制限します。
 肥満は、血管の周囲などの余分な脂肪を増加させ、血行をさまたげるので標準体重を維持します。コレステロール値が高いと、動脈硬化が進行しますので、脂肪(とくに動物性の脂肪)を過剰にとらないよう心がけます。
 薬物療法としては、腎臓障害はもちろん、脳卒中(のうそっちゅう)や心不全がおこらないように、はやくから降圧薬を使用します。心筋梗塞(しんきんこうそく)などの心臓病がともなうのを予防するには、β遮断薬(ベータしゃだんやく)(交感神経にはたらいて血圧上昇を抑える薬)が効果的です。また、利尿薬は脳卒中の予防に効果があるといわれています。
 一方、カルシウム拮抗薬(きっこうやく)とアンギオテンシン変換酵素を阻害する薬は、長く使い続けることで、腎臓の機能の低下を予防します。いずれにしても、1種類ないし数種類の利尿薬を長期にわたって服用するのが原則です。

[日常生活の注意]
 心理的・社会的ストレスは、高血圧や心臓の病気の発病や進行にかかわるので、注意が必要です。また、たばこに含まれるニコチンは、血管を収縮させ、一過性の血圧上昇をおこします。
 家庭での血圧の測定は役に立ちますが、家庭用血圧計の精度を確認するため診療施設でチェックを受けるとか、静かな環境で5分ほど安静にした後で測定するなどの注意が必要です。
 また、家庭で測ると、診療施設で測る血圧よりも低くなることが多いので、勝手に判断し降圧薬の服用を中止するなどしないようにしてください。

出典|小学館
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大辞林 第三版の解説

じんこうかしょう【腎硬化症】

慢性の腎疾患によって腎臓が硬く小さくなった状態。

出典|三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

腎硬化症
じんこうかしょう

腎臓には無数の細小動脈があるが、その動脈硬化のために機能障害をおこし高血圧症状を呈する疾患で、良性と悪性に大別される。
 良性腎硬化症は高血圧症状が主(すなわち本態性高血圧症)で、炎症性の腎疾患、尿路の通過障害などの血圧亢進(こうしん)を引き起こす原因が認められないものである。予後は比較的良好で、20年ないし30年の経過で進行し、その間に、腎不全よりも脳卒中、高血圧による心不全、冠動脈疾患で死亡することがある。ときに悪性腎硬化症に移行する。
 悪性腎硬化症は高血圧とともにタンパク尿や血尿などの腎不全症状を伴い、眼底にうっ血乳頭が認められ、網膜に白斑(はくはん)出血などがある。経過が早く、尿毒症をおこし、あるいは急に高血圧脳症をおこし、予後不良である。[加藤暎一]

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