PTHは、血液中のカルシウム(正常値8.6~10.4㎎/㎗)を調節する最も大切なホルモンで、ほかの原因で低カルシウム血症になった場合には、それを是正しようとするためにPTHの分泌が高まります。この場合は二次性副甲状腺機能亢進症として、副甲状腺の病気である原発性とは区別しています。
この項では原発性副甲状腺機能亢進症について解説します。
原発性副甲状腺機能亢進症の原因には、副甲状腺の
このうち8割以上は良性の腺腫で、この場合は4つある副甲状腺のうちひとつが腫大します。
過形成は4つの副甲状腺のすべてが異常になるもので、
がんの場合には副甲状腺が大きく腫大し、高カルシウム血症も高度であることが多く、予後は不良です。
多くの場合、あまりはっきりした症状はみられません。高カルシウム血症の症状としては、
最近は、健康診断などで血中カルシウム濃度を測定する機会が増えたため、偶然、高カルシウム血症を発見されて診断に至る例が増えています。
しかしながらまれに、急速に病気が進行して高度のカルシウム血症(15㎎/㎗以上)を来すと、意識障害などを伴った生命に関わる状態(高カルシウムクリーゼ)になり、緊急を要することもあります。
症状に乏しい場合でも、副甲状腺機能亢進症が長い間続くと、PTHが骨の吸収を促進するために骨粗鬆症になったり、腎臓へのカルシウムの負荷が高まるために尿路結石や腎障害を生じることがあります。また、この病気には
高カルシウム血症と血中PTH濃度の高値が証明されれば診断されます。そのほか、血液検査では低リン血症、活性型ビタミンD濃度の高値などがみられます。次に、腫大した副甲状腺を
そのほか、後で述べるように手術の適否を決めるためには、骨量検査、腎臓(腹部)の超音波検査、X線検査、腎機能検査、尿中カルシウム排泄の測定などによる合併症の評価が必要になります。
治療の原則は、腫大した副甲状腺を摘除する手術です。腺腫の場合には、通常ひとつの腺だけの異常なのでこれを摘出します。見かけ上、ほかの3腺が正常でも、過形成であることもあるので、同じ側のもう1腺も組織を調べるために摘除します。最近では、以前に比べてより体への負担が少なく、傷跡が目立たない新しい手術方法が行われるようになりつつあります。
過形成の場合には、4腺全部を摘出する必要があります。そのままでは低下症になってしまうので、通常、1腺の半分だけを上腕に
高カルシウム血症が軽度な場合には、かなり長い間無症状で経過することが多いため、腎障害、骨粗鬆症などの程度や患者さんの年齢によって、手術の適否を決定するガイドラインが決められています(表3)。
高カルシウム血症を指摘されたら、内分泌の専門医の診察を受けることをすすめます。
井上 大輔
副甲状腺ホルモン(PTH)の過剰分泌により、高カルシウム血症、低リン血症が引き起こされる疾患であり、原発性と続発性があります。
原発性は、副甲状腺の
続発性は、低カルシウム血症あるいは高リン血症により二次的にPTH分泌が亢進するもので、多くは慢性腎不全などに伴います。
高カルシウム血症の症状として、
NSHPTでは哺乳不良、嘔吐、肋骨の変形や骨折による呼吸障害が生じます。一方、FHHでは症状が
血液検査では高カルシウム血症と高PTH血症が同時に存在します。FHHの区別には、血中・尿中カルシウムとクレアチニンを同時に測定し、カルシウムとクレアチニンのクリアランス比を算出します。また、現在ではカルシウム感知受容体の遺伝子検査も行われます。原発性腺腫などの局在診断には超音波検査やMRI、シンチグラムが有用です。
腫瘍に基づくものでは、小児では全例で手術が必要と考えられます。NSHPTを含め、高カルシウム血症クリーゼの時には、まず脱水の補正を行い、そのあと利尿薬(尿カルシウム排泄促進)、カルシトニン(骨吸収の抑制と尿カルシウム排泄促進)、ビスホスフォネート製剤(骨吸収の抑制)などを投与します。
続発性副甲状腺機能亢進症では、高リン血症、低カルシウム血症の是正が重要であり、ビタミンD製剤の投与や食事療法が行われます。
内分泌疾患の専門外来をもつ小児科を受診します。
杉原 茂孝
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
副甲状腺ホルモンが多すぎるためにおこる疾患。多くは副甲状腺(上皮小体)に腫瘍(しゅよう)ができ、そこからホルモンが多量に分泌されるためにおこる。また、尿毒症など慢性腎(じん)疾患の場合に腸からのカルシウムの吸収低下がおこり、その結果、副甲状腺からホルモンが多量に分泌されることもあるが、その場合は続発性副甲状腺機能亢進症とよぶ。症状は、副甲状腺ホルモンによるカルシウム代謝異常が全身に現れる。症状は多様で、その程度もまちまちであり、昏睡(こんすい)に陥る例もあれば、なんら自覚症状がなく偶然検診で発見されるものまである。おもに脱力感、多飲と多尿、食欲不振、体重減少、関節痛や骨折などの骨症状、尿路結石のほか、ときに消化性潰瘍(かいよう)、性格変化などの精神症状もみられる。治療は早期診断により副甲状腺の腫瘍を外科的に摘出することであり、進行すると腎機能が低下し、ついには尿毒症になって死亡する。
[高野加寿恵]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
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