改訂新版 世界大百科事典 「二葉保育園」の意味・わかりやすい解説
二葉保育園 (ふたばほいくえん)
明治期に創設された代表的な保育所。野口幽香(ゆか)(1866-1950)らクリスチャンにより,1900年東京麴町に二葉幼稚園の名で開設された。当時の幼稚園が中流以上の子どもの保育に傾いていたのに対し,貧民の子を良い境遇において教育することはおとなの義務であるとの考えに立って,3歳以上の幼児を対象に1日7~8時間の保育を行い,休日も日曜・祝祭日と年末年始に限り,これにより父母の労働を助けた。保育内容は〈遊嬉〉〈唱歌〉〈談話〉〈手技〉であった。賛同者が定期的に,また臨時に寄付を行い,園充実の基盤をつくった。園児には毎日1銭を持参させ,5厘を本人の貯金とし,5厘をおやつ代とした。発足当初,定員15人にすぎなかったが,06年四ッ谷鮫ヶ橋の皇室御料地を無料で借り,15年には徳永恕(ゆき)ら保母10人,園児250人に達した。16年二葉保育園と改称したが,このような保育施設はしだいに幼稚園の名をつけぬようになった。
執筆者:山住 正己
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報