改訂新版 世界大百科事典 「井川ダム」の意味・わかりやすい解説
井川ダム (いかわダム)
大井川の上流,静岡市葵区井川にある発電専用ダム。中部電力によって1957年に完成。高さ103.6m,堤頂長243m,堤体積43万m3,貯水池の湛水(たんすい)面積は4.22km2で,総貯水量1億5000万m3,有効貯水量1億2500万m3,下流の井川発電所の最大出力6万2000kW。第2次世界大戦後大ダムが盛んに建設されるようになり,新しい設計施工技術の発達と相まって,日本では初めての形式である中空重力ダムを採用して堤体積の削減を図った。中空部に洪水吐を設けたが,当時は世界でもこのような設計はきわめて少なかった。193戸の水没家屋のうち94戸の移転先として,ダム付近右岸の高台に水田7ha,畑地12haの造成をしたり,学校,公民館を建設するなど,補償においても画期的なものであった。東海道本線金谷から大井川鉄道で千頭へ,ここから山岳列車に乗り継いで終点井川にある。近くに寸又峡温泉がある。
執筆者:柴田 功
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