井於郷(読み)いのえごう

日本歴史地名大系 「井於郷」の解説

井於郷
いのえごう

和名抄」にみえ、高山寺本は「為乃倍」、東急本は「井乃倍」の訓を記す。郷名は早く失われて郷域は確定しがたいが、三つの説がある。一つは「日本霊異記」下巻第五話の説話を根拠とする。安宿あすかべ郡内の信天原しではら山寺の住僧が布施銭五貫を盗んで隠しておいたところ、銭が鹿に変じた。そこでこれを運ぶために「河内の市の辺の井上寺の里」で人を集めて帰ってくると、鹿がもとの銭五貫にもどっていたという。これによると河内市の近傍に井上寺があったことになる。河内市は諸史料にその殷賑を伝える会賀えが(恵我)市とみてよく、河内国府(現藤井寺市の国府・惣社に比定)の近辺に置かれていたと考えられる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android