日本大百科全書(ニッポニカ) 「人口史観」の意味・わかりやすい解説
人口史観
じんこうしかん
社会変動の究極的原因に関するさまざまの見解のうち、人口の影響力を重くみ、人口増加や人口密度などが社会の発展を規定すると考える立場。古くは人口増加と人口密度によって社会を五つの発展段階に分けたコストがあり、また、人口数や人口増加、人口密度が戦争、革命、生産力や生産技術、分業、所有制度、社会組織、社会制度、慣習、言語といった社会諸現象に影響を及ぼすことが指摘されてきた(カルリFilippo Carli、コバレフスキー、ルバッスールPierre Émile Levasseur、デュプレールEugène Dupréelなど)。
近代社会学で人口の役割を重視したのは、スペンサー、ギディングス、デュルケームなどである。デュルケームは社会的分業の発展が社会の容積と密度の増大によって生ずると考えた。ブーグレも人口数、密度、人口の移動が社会構造を変化させるとした。人口の新陳代謝の強弱が社会の盛衰を決定するとするジニの理論や、高田保馬(やすま)の第三史観も、人口史観の一種とみられる。
[皆川勇一]
『E・デュルケーム著、田原音和訳『社会分業論』(1971・青木書店)』▽『C・ブーグレ著、本田喜代治・牧野巽訳『社会学入門』(1929・刀江書院)』▽『高田保馬著『階級及第三史観』(1925・改造社)』