改訂新版 世界大百科事典 「社会分業論」の意味・わかりやすい解説
社会分業論 (しゃかいぶんぎょうろん)
De la division du travail social
フランスの社会学者デュルケームの著書。1893年刊行。社会における分業の発達の原因をさぐり,その発達によって生じる社会的・道徳的変化を考察する。デュルケームによれば,分業は人口の増大・集中,環節的社会構造の崩壊,交通手段の発達などにともなって進行する。その結果しだいに職能の専門化が進み,集合意識の斉一的な支配が弱まり,社会成員の異質化と個性化が生じる。それは社会の諸単位が異質化しつつ相互依存性を深めていくことを意味するわけで,そこに新たな連帯,〈有機的連帯〉がつくり出されていく。これは分業の未発達な社会における同質的な諸単位の連帯,〈機械的連帯〉と対照的な性格をもつものである。このように分業の発達と社会的連帯の型の変遷との関連を考察したところに,本書の意義がある。しかしデュルケームは現実の西欧社会のなかに〈無規制的分業〉という異常形態をも看取しており,アノミー(無規制)問題の発見を本書の意義の第一にあげる見解もある。
執筆者:宮島 喬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報