人工採苗
じんこうさいびょう
養殖や放流に用いる水族の卵や幼生を種苗といい、それをとることを採苗という。したがって、人為的に水族を管理して種苗を得ることを人工採苗といい、海や河川(湖沼)から直接採苗する天然採苗に対する語。人工採苗の語は、一般に海藻や貝類について用いられることが多い。海藻では胞子の放出時に採苗器を入れて胞子を着生させるが、これはとくに種(たね)付けとよばれている。貝類では温度刺激や精子添加の併用、紫外線照射や海水添加などにより産卵を誘発し、受精を行って幼生を育てて種苗を得る。このうちカキの場合は種ガキ、または単に種とよばれる。魚類や甲殻類(エビ・カニ類)などは種苗生産といい、人工管理下で産卵・孵化(ふか)させ、養殖や放流に用いる種苗を人工種苗という。
[小橋二夫]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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世界大百科事典(旧版)内の人工採苗の言及
【採苗】より
…魚類,エビ,カニ,アワビなどの種苗についても採苗という言葉が使われることがあるが,これらについては,天然の稚仔を採る場合には採捕,人工的に採る場合には種苗生産というのがふつうである。 採苗法には大別して天然採苗と人工採苗とがある。天然採苗は天然発生の種苗を付着させて採るもので,ひび建て式(カキ,ノリ),簡易垂下式(カキ,ホタテガイ),垂下式(カキ,ホタテガイ,ホヤ)などの方式がある。…
【ノリ(海苔)】より
…海岸が急深なところでは,この移動ができないので,最初から人工干出を与えやすいくふうがされている浮上いかだ式が採用されている。 採苗は古くは,胞子の付着しやすい胞子場(種場(たねば))に網などを張り込む天然採苗が行われたが,1949年アサクサノリを主とする養殖ノリの生活史が解明され,それに基づく人工採苗の技術が開発されたため,現在ではほとんどそれによっている。人工採苗は糸状体を培養して,初秋にこれから放出される単胞子をひび網に付着させる方法で,普通は貝殻などの中で糸状体を育てるが,近年培養液中で裸の糸状体を育てるフリーfree培養法も開発された。…
※「人工採苗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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