放流(読み)ほうりゅう

精選版 日本国語大辞典 「放流」の意味・読み・例文・類語

ほう‐りゅう ハウリウ【放流】

〘名〙
① せきとめた水などを放ち流すこと。また、流れ出すこと。比喩的に、物事が、せきを切ったように広まって行くこと。
※政党評判記(1890)〈利光鶴松〉一「利の発揚する所、害必ず是に潜み、害の放流する所、利必ず是に伴ふ」
追放すること。所払いをすること。
蘭東事始(1815)上「蛮人種子の分は、残らず此地を放流せられしが」
③ 魚を繁殖させるために、稚魚を川・池・海などへ放すこと。

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デジタル大辞泉 「放流」の意味・読み・例文・類語

ほう‐りゅう〔ハウリウ〕【放流】

[名](スル)
せき止めた水を放出すること。「貯水池の水を放流する」
繁殖などのために、稚魚を川や湖に放すこと。「稚鮎ちあゆを川に放流する」
追放すること。
「蛮人の種子の分は残らずこの地を―せられしが」〈蘭学事始
[類語]水流清流濁流急流激流奔流懸河緩流放水貫流合流蛇行流れる流動する流通する流出するける通う・流れ下る・押し流す逆巻く渦巻く淀む

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改訂新版 世界大百科事典 「放流」の意味・わかりやすい解説

放流 (ほうりゅう)

ある水域他所から運んできた水産生物を放すことをいう。ほとんど同じ意味のことばに移殖がある。海草や貝類など動きがないか少ないものを,それらのほとんど存在しない場所に移すような場合に〈移殖〉が,魚など移動力の強い動物を,それらの資源の増強のためにある水域に放すような場合に〈放流〉が使われる傾向はあるものの,両者を明確に区別することはできない。

 放流には受精卵を河川などに置いて自然に孵化(ふか)させる孵化放流,人工孵化あるいは天然採集した稚仔を放す種苗放流,成体あるいは親の放流,などがあるが,最近は人工孵化させ,一定の大きさまで育成した種苗の放流に重点が置かれている。人工孵化や中間育成などの種苗生産技術の飛躍的な進歩により,サケアユなど古くから放流の行われている種類はいうまでもなく,マダイヒラメ,クルマエビ,アワビなど多種多様の水産動物の放流事業が行われ,成果を挙げつつある。
移殖
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普及版 字通 「放流」の読み・字形・画数・意味

【放流】ほうりゆう(はうりう)

追放。流罪。〔史記、屈原伝〕屈~放せらると雖も、楚國を(けんこ)し、心を懷王に(つな)ぐ。~一の中、三たび志を致す。

字通「放」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の放流の言及

【移殖】より

…水産業の分野では,従来そこにいなかったり,あるいは少なくなってしまった魚介類を他の水域から移して成長・繁殖させることを移殖と呼んでいる。また,表現の力点が違うだけで実質的には同じ内容を持つ語に放流があり,移殖・放流と重ねて使われることも多い。移殖・放流は水産資源の増殖をはかる積極的な方法として古くから行われ,河川湖沼はもちろん,沿岸浅海における漁業生産に大きく貢献してきた。…

【増殖】より

…水産生物の繁殖と成長を助長しようとする人間の試みであるが,養殖を含む広い意味で使われる場合と,養殖を除外した狭い意味で使われる場合とがある。ここでは後者について述べるが,この場合は公共水面において漁業資源の維持・増大を目的として行われるもので,漁業管理,環境改善,移殖・放流の三つを柱とする。そして,自然の生産力に多くを依存し,生産物は漁業によって収穫され,それまでは所有者が決まっていない点などに養殖との相違がみられる。…

※「放流」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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