採苗(読み)サイビョウ

デジタル大辞泉 「採苗」の意味・読み・例文・類語

さい‐びょう〔‐ベウ〕【採苗】

種苗を採取すること。養殖放流のために、魚貝の卵・幼生海藻胞子などを取ること。「人工採苗

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「採苗」の意味・わかりやすい解説

採苗 (さいびょう)

(1)養蚕の分野ではクワ苗木を育成することをいう。クワは有性繁殖も無性繁殖も可能であるが,有性繁殖の場合,クワは遺伝的に雑種の状態であるので,種子から育成した苗木の形質はさまざまとなる。そのため,苗木の育成は無性繁殖によることが多い。無性繁殖の方法には,接木法,取木法,挿木法,代出(しろだし)法などがあるが,接木による桑苗生産がそのうち約8割を占める。接木法とは,接穂と台木を接着させて,癒合によって苗木を育成する方法で,台木には種子より育成した実生苗を用いることが多い。取木法はクワの枝を地中に曲げ込み,不定根を発生させた後に母樹から切り離して苗木を育成する方法である。挿木法は枝の切口にできるカルスより不定根を発生させて苗木を育成する方法で,冬の間に採取した枝を貯蔵しておき,2~3芽をつけた挿穂を地中にさし込む。地温を高め,発根を促進するために,挿床はポリエチレンフィルムで覆う。また,当年の緑枝を挿木する方法を新梢(しんしよう)挿木法という。代出法は接木苗,取木苗および挿木苗などのくず苗を1年間育成して苗木とする方法である。
執筆者:(2)水産の分野では養殖や移殖・放流に利用する種苗を採ることをいう。ノリ,ワカメなどの海藻の遊走子や,カキ,ホタテガイ,マボヤなどの無脊椎動物の付着期の幼稚仔(ちし)を採苗器に付着させて採る。魚類,エビ,カニアワビなどの種苗についても採苗という言葉が使われることがあるが,これらについては,天然の稚仔を採る場合には採捕,人工的に採る場合には種苗生産というのがふつうである。

 採苗法には大別して天然採苗と人工採苗とがある。天然採苗は天然発生の種苗を付着させて採るもので,ひび建て式(カキ,ノリ),簡易垂下式(カキ,ホタテガイ),垂下式(カキ,ホタテガイ,ホヤ)などの方式がある。人工採苗は人工的に発生させた種苗を付着させるもので,とくにノリでは糸状体を培養し,そこから出る遊走子を網などに付着させることが普及している。また,ワカメでもタンクの中で細い種糸に遊走子を付着させることが行われている。
養殖
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