日本大百科全書(ニッポニカ) 「人間以上」の意味・わかりやすい解説
人間以上
にんげんいじょう
More Than Human
幻想派のSF作家シオドア・スタージョンの代表作。1953年刊。手を触れないで物を動かせる少女、瞬時に姿を消せる双生児、恐るべき記憶力をもつ不良少年、すこしも成長せずにコンピュータのように知識を蓄えていく赤ん坊。この奇妙な5人が25歳の白痴の男の周囲に集まったとき、彼らはゲシュタルト生命を形成して高次な存在となる。ひとりひとりでは中途半端な彼らも、6人がその力を結集すれば、人類を破滅に導くほどの恐ろしい力を発揮できるのだ。彼らは個々の人間であると同時に、単一の生物でもあり、白痴がこの有機体の頭脳であった。超存在の誕生と成長を描くユニークなアメリカのSF。
[厚木 淳]
『矢野徹訳『人間以上』(ハヤカワ文庫)』