仁丹(読み)じんたん

精選版 日本国語大辞典 「仁丹」の意味・読み・例文・類語

じん‐たん【仁丹】

  1. 薬の商標名。口中清涼剤として広く知られる。明治三八年(一九〇五)から発売

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改訂新版 世界大百科事典 「仁丹」の意味・わかりやすい解説

仁丹 (じんたん)

口中清涼剤。1905年に大阪の薬種商の森下南陽堂(1893年,森下博が創業)から発売された。同時に森下博薬房と改称された同社は,創業以来〈広告益世〉を事業目標の一つに掲げ,その広告活動は第2次世界大戦までの日本の広告界において突出していた。当時の大衆のあこがれであった大礼服姿を,ドイツの宰相ビスマルク像をもとにデザイン化して商標とし,商品名には儒教の五常(仁義礼智信)の最初の文字で文字の王とされる〈仁〉をとるなど,日清・日露戦争時の世相にあわせて好評を得,新聞・雑誌の1ページ広告,看板,電柱広告などによる効能広告とあいまって,発売2年目で日本の家庭薬の売上げの第1位に躍進している。また仁丹は,中国市場を見越したネーミングでもあって,大陸では〈万病の薬〉としてこれを売る仁丹売りが各地に見られた。1907年の大阪駅前の電飾広告,翌年の神田明神境内の3色変化広告塔など,積極的に新手法を試み,第1次世界大戦勃発時(1914)に始まった〈金言広告〉は一世をふうびした。雑誌《広告界》の28年の〈広告主番付〉では,西の大関とされている。36年の飛行機〈仁丹号〉による全国一周飛行など,日本の広告発達史上,つねに注目を集めてきた。現社名は森下仁丹(株)。本社大阪,資本金6億円,売上高83億7600万円(1983)。
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