仏伝文学(読み)ぶつでんぶんがく

山川 世界史小辞典 改訂新版 「仏伝文学」の解説

仏伝文学(ぶつでんぶんがく)

仏教開祖である釈尊(しゃくそん)生涯を物語る文献総称で,釈尊の前生を物語る『ジャータカ(本生話(ほんしょうわ))』と並んで仏教文学の重要分野を占める。代表的なものにアシュヴァゴーシャ(馬鳴(めみょう))の『ブッダチャリタ(仏所行讃(ぶっしょぎょうさん))』や,『マハーヴァスツ(大事(だいじ))』『仏本行集経』(ぶつほんぎょうじっきょう),そして日本の絵巻物などに大きな影響を与えた『過去現在因果経』などがある。釈尊は前5世紀頃インドに生まれ,その生涯の事績は仏弟子,信者たちによって語り継がれてきた。時代とともに釈尊の超人化・神格化が進み,人間としての釈尊の姿に多くの説話的・神話的要素が付加されていった。このようにして成立した仏伝文学は,のちの大乗仏教の形成,特にその仏陀観に大きな影響を与えた。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の仏伝文学の言及

【釈迦】より

…それ自体劇的な一代記であり,これに本生譚(ジャータカ)と呼ばれる前世時のさまざまな物語や滅後の舎利分納,仏典結集や阿難,目連など弟子たちをめぐる逸話が付随する。これら釈迦をめぐる物語は広く〈仏伝文学〉と呼ばれ,日本の文学・文化史に重要な位置を占める。 日本の文学史で,最初にまとまった仏伝をのせるのは10世紀末の《三宝絵》であるが,仏として生まれる以前の本生譚が中心で,飢えた虎に自らの命を与える薩埵(さつた)王子や自らの命と引換に鬼から無常偈を教えてもらう雪山童子などの自己犠牲(利他行)の話が集められている。…

※「仏伝文学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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