日本大百科全書(ニッポニカ) 「代数関数論」の意味・わかりやすい解説
代数関数論
だいすうかんすうろん
algebraic function theory
二つの変数X、Yの多項式f(X,Y)をとり、代数方程式
(1) f(X,Y)=0
を満たす複素数x、yを求めるのに、まず(1)のXにxを代入すると、yは、Yの式
(2) f(x,Y)=0
の根になるから、与えられたxに対して、f(x,y)=0なるyは、(2)の左辺のYに関する多項式の根として、一般に、次数個だけ決まってくる。これらのyをまとめて普通の関数のようにy=w(x)と書く。
このとき、yは与えられたxに対し2個以上決まりうる、いわゆる多価関数になるが、このような関数w(x)を代数関数という。代数関数を研究するのが代数関数論である。たとえば
(3) f(X,Y)=Y2-X(X-1)(X-2)
のとき、xを与えると、yは一般に2個決まる。このx、yを実数に限って求めてみると一つのグラフができる。こうした考え方を複素数まで広め、(3)を満たす(x,y)全体に無限遠点∞を加えると、その集合はドーナツ状の曲面と考えられる。この曲面を(3)式のリーマン面という。
(1)が既約多項式のとき、この例と同じように(1)式のリーマン面が構成され、この面上解析関数が定義される。さらに、これら解析関数全体は(1)式から決まる代数関数体といわれる体になっているなど、深くて精密な理論が完成している。現代の代数幾何学は実にここから出発したのである。
[菅野恒雄]