改訂新版 世界大百科事典 「無限遠点」の意味・わかりやすい解説
無限遠点 (むげんえんてん)
point at infinity
平面は閉じていないが,1点をつけ加えたり,または平面の各方向にそれぞれ1点をつけ加えれば,平面は閉じた面となる。このときつけ加えられる新しい点を無限遠点という。二つの場合に分けてもう少し詳しく説明しよう。
(1)平面αが与えられたとき,その上に中心Oをもつ球面Sをつくり,αに垂直な直径の一端をNとして,α上の各点Qに対し直線NQとSとの交点Pを対応させる(図1)。この対応によりα上の点とNを除いたS上の点とは1対1に対応する。Nに応ずるα上の点はないが,PがNに近づくとき,QはOからどんどん遠くへ離れていく。そこでα上の無限の遠くに新しい1点をつくり,この点がNに対応するとすれば,この点も含めたαはSと同一視でき,閉じた面となる。新しい1点を∞で表し,無限遠点という。複素平面に∞を導入すれば,例えば複素数zを1/zにうつす関数なども1対1となり複素関数の研究に便利である。
(2)平面αに接する球面Sをつくり,接点をT,球の中心をO,αに平行なSの大円をCとする。いま,α上の各点Qに対し,直線OQとSとの交点をP,P*とすれば,これらは対心点で,Qを{P,P*}にうつす対応によりα上の点とCに含まれないS上の対心点の組とは1対1に対応する。Cに含まれる対心点の組に応ずるα上の点はないが,{P,P*}がTを通る大円に沿ってC上の対心点の組に近づけばQはこの大円の面とαとの交わりである直線上をTからどんどん遠くへ離れていく(図2)。それでTを通る各直線lに対し,その上の無限の遠くに新しい1点l∞をつくり,この点がlと平行なSの直径の両端であるC上の対心点の組に対応するとすれば,すべてのl∞を含めたαはS上の対心点の組全体の集合,したがってS上の対心点のおのおのをはり合わせてできる曲面(これを射影平面という)と同一視でき,閉じた面となる。l∞をlの方向の無限遠点と呼び,すべての方向の無限遠点は新しい一つの直線をつくると考えて,これを無限遠直線と呼ぶ。平面上の平行な2直線はその方向の無限遠点で交わると考えれば,平面上の相異なる2直線はつねに1点で交わることになり,点や直線の結合的性質が統一的に研究でき便利である。
執筆者:中岡 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報