日本大百科全書(ニッポニカ) 「会計主体」の意味・わかりやすい解説
会計主体
かいけいしゅたい
会計上の判断を行う主体をいう。歴史的にはいくつかの考え方が示されてきたが、それらには、所有主ないし出資者の立場から会計上の判断を行うべきとする所有主説、経営者を出資者の代理人とみなし、代理人としての立場から会計上の判断を行うべきとする代理人説、企業を出資者からは独立した存在とみなし、そのような企業の立場から会計上の判断をすべきとする企業主体説、企業を出資者、債権者、経営者、従業員等とは別個の独立した存在とみなし、そのような立場から会計上の判断をすべきとする企業体説などがある。
たとえば、債権者に対する利息の支払いと株主に対する配当金の支払いでいえば、次のような相違がある。所有主説では資金の提供者は所有主であり、最終的には所有主に帰属する利益を計算することになるので、利息の支払いは費用、配当金の支払いは利益処分とされるのに対して、企業主体説では債権者と株主は資金の提供者としては同列であるので、利息の支払いも配当金の支払いも利益処分とされることになる。
このように会計上の判断を行う主体をだれとみるかにより、理論上は費用とされる範囲も異なることになる。ただし、現行の制度上は、所有主ないし出資者の立場から会計上の判断を行うべきとする所有主説に基づいた取扱いがなされている。
[万代勝信]