( 1 )漢籍に見える語で「息」は「ふえる」の意。近世では「利足」という表記が一般的。これは「料足」のように金銭を「足(そく)」で表わしたところから、同音の「息」に代わって用いられたと思われる。そこから新たに「りあし(利足)」という言い方も生じたが、明治以降は、規範的な「利息」が復活した。
( 2 )「利息(足)」「利子」はともに近世から使われているが、中世においては、「子(こ)」といった。「太平記‐八」には、「利」と結合した「利子(りこ)」という重箱読みの形も見られるが、近世になって「利足(りそく)」が一般的になると、「子(こ)」も「利」と結合する際に音読され「利子(りし)」が生じたと考えられる。
利息とは資金の貸借の対価あるいは貸借される資金の使用料のことをいい,金利,利子と同義である。また貸借される資金すなわち元金に対するその使用料の比率のことも利息ということもある。経済学においては利息は将来時点における資金の,現在時点における資金に対する相対価格として観念される。たとえば現在時点から将来時点までの利子率(利息)をrとすれば,将来時点における1円は現在時点における1/(1+r)円の価値をもつと評価される。すなわち将来時点の資金の現在時点の資金に対する相対価格は1/(1+r)である。
執筆者:落合 仁司
利息の法律上の意義については明文の規定がなく,講学上,利息とは,元本債権の存在を前提とし,元本使用の対価として,その額と存続期間に比例して一定利率をもって支払われる金銭その他の代替物であるといわれている。利息は,金銭その他の代替物であればよいので,元本(がんぽん)と利息とは必ずしも同一種類の代替物たることを要しない。米穀物の貸借において利息を金銭で支払ったり,金銭貸借において穀物をもって利息を支払ったりしてもよいわけである。
(1)利息は元本使用の対価として支払われるものであるから,法定果実(〈果実〉の項参照)の一種である。法律の規定によって生ずる利息を法定利息といい,当事者間の契約によって発生する利息を約定利息という。(2)利息は元本債権の存在を前提として発生する。元本債権がなければ利息は発生しない。利息は元本債権から生ずるものであるから,元本債権に基づかない終身定期金(民法689条)や建設利息(商法291条)などは利息とはいえない。元本債権は,いわゆる流動資本たることを要するから,土地,建物など固定資本より生ずる地代,家賃も利息ではない。(3)利息は元本の収入・所得であって,元本の償却を含まない。したがって,元本の償却金,分割払いの分割金,株式の配当金なども利息ではない。遅延利息は,利息という名称が用いられているが,それは本来金銭貸借上の債務不履行による一種の損害賠償たる性質を有するものである。その賠償額が利率と期間とによって算定され,利息に類似することから遅延利息とか遅延損害金と呼んでいる。(4)利息には,利率の観念を欠くことはできない。利率とは元本に対する利息の割合であって,元本利用の一定期間を単位として定められる。利率には,契約によって定まる約定利率と法律の規定によって定まる法定利率とがある。法定利率は民事の場合年5分(民法404条),商事の場合年6分(商法514条)である。(5)金銭貸借において,貸主が礼金,割引金,手数料,調査料などの名目で受け取る元本以外の金銭は利息とみなされる(利息制限法3条)。これを〈みなし利息〉という。これらのものの多くは,利息の実質を有するにもかかわらず,従来,礼金,割引料などの名目のもとに,利息の制限を逸脱する手段として利用されてきたので,これを防ぐために,利息制限法はこれらを利息とみなすことにした。ただし,契約を締結するのに直接かつ現実に必要な費用(たとえば,契約書作成費,公正証書作成費,抵当権設定の登記料など)や弁済をなすに必要な費用(たとえば,督促費用,強制執行費用,競売費用など)はみなし利息から除外される。
利息の形態はその計算方法,支払方法等により次のように分類できる。
(1)後払利息 最も一般的に行われている形態である。後払利息は,弁済期に元本額に対する一定利率により算出され(単利計算),元本とともにあるいは元本とは別個に支払われるものである。たとえば,元本10万円,利息年1割8分,期間1ヵ年の金銭消費貸借において,借主は弁済期に元本10万円と利息1万8000円を支払うことになる。弁済期後,元本を引き続き借り受けるときは利息1万8000円をさらに支払うことになる。もっとも,利息の弁済期は必ずしも元本債権の弁済期と同一ではないが,当事者間に別段の定めがない場合には,元本債権の弁済期と同一であると解すべきである。
(2)複利(重利ともいう) 後払利息は,単利計算による場合と複利により算出される場合がある。複利とは,弁済期に支払われない利息を元本に組み入れて,その総額に対してさらに利息を計算することである。いわば利息の元本化,利息の利息化である。ローマ法以来多くの立法例は,複利は債務者に過酷な結果を招くおそれがあることからこれを禁止してきたが,日本では法定複利の規定(民法405条)をおくとともに,契約自由の立場を貫き約定複利を禁止しなかった。法定複利は,債務者が1年分以上利息を延滞し,債権者が催告してもなお支払わないときに,延滞利息を元本に組み入れることができるとする。約定複利つまり複利契約には,利息の弁済期が到来した後に利息を元本に組み入れる契約と,利息の弁済期が到来しない前にあらかじめなされる契約(複利の予約)とがある。前者については,貸主は利息制限法の制限を超える利息を元本に組み入れることはできない。後者については,貸主が借主において支払ができないことを予想し,利息を元本に組み入れることを約すると,債務額がきわめて多額に達し,借主にはなはだ過酷な結果を招くおそれがある。このように,年数回の利息の組入れを約する複利の予約は,毎期における組入れ利息とこれに対する利息との合算額が,本来の元本額に対する関係において,1年につき利息制限法所定の制限利率により計算した額を超えない限度においてのみ有効であるとされる(1970年最高裁判所判決)。なお,複利は,郵便局の預貯金の利息や信託銀行の金銭の利息の計算方法として行われている。
(3)前払利息 金銭消費貸借の締結の際に,あらかじめ支払われる利息のことである。通常,利息の天引きという方法で行われている。
(4)アドオン方式 アドオン方式とは,元利金合計額を元金として分割して返済させる貸付方式である。たとえば,100万円を利息年6分で2年間貸し付ける場合,元金100万プラス利息12万円を貸し付けたことにし,これを均等分割して返済させるのである。この場合,利息は貸付実行時に全額先取りしてしまう形になる。アドオン方式は,最近では比較的期間の短い自動車,電化製品,ピアノ等の割賦販売に用いられ,住宅など長期のものは,月利方式へ移行している。
→出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律
執筆者:森泉 章
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
金銭その他の代替物(元本)の使用の対価として、元本額と使用期間に比例して、一定の割合(利率)により支払われる金銭その他の代替物。不代替物の使用の対価である地代や賃料などとは異なる。また、遅延利息は、利息と名づけられてはいるものの、その実質は損害賠償であることに留意しなければならない。利息は、当事者間の特約によって発生する場合(約定利息)と、法律の規定によって発生する場合(法定利息)とがある。当事者が利息の生ずることのみを約束し、利率を定めなかった場合には、その利率は、商事取引では年6分(商法514条)、民事取引では年5分(民法404条)とされている。なお、当事者間の約束により利率を定めるときには、その利率の最高限度が利息制限法によって定められている。
弁済期の到来した利息を元本に組み入れて、これに対して利息を付することを重利(複利)という。この重利の約束も有効であるが、重利も利息であるから、もとの元本を基礎として、重利の分もあわせた利息につき、利息制限法の適用を受ける。重利の約束がなくても、利息が1年分以上延滞し、債権者が催告をしてもなお支払いのないときは、債権者は延滞した利息を元本に組み入れる権利を有する(民法405条)。これを法定重利という。なお、経済・財政上では、「利子」という用語を用いることが多いようである。
[竹内俊雄]
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…資金の貸借の対価あるいは貸借される資金の使用料のことで,利子あるいは利息ともいう。また貸借される資金すなわち元金に対するその使用料の比率をいうこともある。…
…金利(利息)あるいはその計算法で,複利に対する考え方。単利においては,金利は満期時に1回だけ元金に繰り込まれる。…
※「利息」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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