伝送基準(読み)でんそうきじゅん(英語表記)transmission engineering standard

改訂新版 世界大百科事典 「伝送基準」の意味・わかりやすい解説

伝送基準 (でんそうきじゅん)
transmission engineering standard

公衆通信網における通信伝送の基本は,伝送距離や通信端末の設置条件にかかわらず,いかなる端末間の通信に対してもある定められた通信品質を維持することである。この通信品質とは,例えば電話でいえばよく聞こえる度合,データ通信の場合には伝送誤りの少なさをいう。公衆通信網などではあらかじめ確保すべき通信品質に関する基準を定め,いかなる加入者からの情報伝達に対してもこの基準が維持されるように通信網が設計されている。この設計条件のうち,伝送上の許容限界値に関する基準ならびに設計法を伝送基準という。

 電話網の場合を例にあげて説明すると,電話伝送の目的は会話内容を相手に十分によく伝達することである。この会話のよく聞こえる度合を数量化したものが通話品質であり,単音の正聴率で測った単音明りょう度,受話音量の大きさで測ったラウドネス,主観評価法で自然度を測ったオピニオン評点などいくつかの測度定量化される。この通話品質をあらかじめ所定の規格として定めたうえで,これを満足するように電話網が設計される。電話網における通話品質には電話機の電気・音響変換特性,加入者線や中継回線の伝送損失周波数特性雑音,漏話,ひずみなどの伝送特性,さらには室内雑音など,いろいろな要因が関連してくる。これらの要因を総合的に考え,さらにこれを通話品質測度とも関連づけて伝送系のよさを表したものが伝送品質である。具体的にはある基準通信伝送系を定め,それとの比較によって伝送系のよさを定量化している。これには明りょう度等価減衰量や通話当量と呼ばれる測度表示法がある。

 確保すべき伝送品質が定められると,これを維持すべく通信網が設計される。すなわち伝送品質劣化要因を通信網各部に合理的に配分して系統的かつ経済的な通信網設計を行うのである。これには損失配分基準,雑音配分基準,漏話配分基準,ひずみ配分基準などさまざまな設計基準が定められており,これらの基準に基づいて合理的に伝送系の設計を行う。これによりすべての加入者に対して所定の通話品質があまねく一様に提供可能になるのである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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