改訂新版 世界大百科事典 「通話品質」の意味・わかりやすい解説
通話品質 (つうわひんしつ)
speech quality
電話伝送の目的は,会話の内容を相手に明りょうに伝達することである。この会話のよく聞こえる度合を数量化したものが通話品質である。通話品質は,送話者の言語能力,受話者の理解力,室内雑音,送受話器の音響特性,通信伝送系における周波数特性,ひずみ,漏話,雑音,受信レベルなどの電気的特性など,多くの要因の複雑な合成結果に支配される。この総合効果をいかに定量化するかが問題であり,しかもその評価が実感に近いことが必要であるだけでなく,客観的で測定しやすく,再現性があり,さらに通信伝送系の設計にも関連づけやすいものでなければならない。このような観点から定められた代表的な通話品質評価法として,現在,表に示すような3通りの方法が広く用いられている。
単音明りょう度sound articulation
会話音声の明りょう性に着目した評価法である。測定すべき通信系を通して所定の試験音節をランダムに送話したとき,受話者に正しく受聴された音節の割合を百分率で表したものを音節明りょう度という。これを母音,子音などの正聴率に換算したものが単音明りょう度である。単音明りょう度が80%程度あれば,冗長性があるふつうの会話での文章了解度はほぼ100%満たされる。
ラウドネスloudness
受話音量の大きさに着目した評価法である。これは人間の耳の特性をも考慮した受聴音の感覚的な強さの尺度として定められた感覚レベルの一種であり,伝送特性がある程度以上良好な一般の通信系では,受話音量が大きいほど通話品質としては優れていると判断できる。
オピニオン評価opinion test
利用者の通話品質に対する主観評価法である。これは通信系を通して通話者相互間でパズルなどの問答を行わせ,その際の通話品質に対する満足度を5段階評点法で評価してもらい,これを統計的手法を用いて定量化する手法である。
伝送品質transmission quality
通話品質には送受話者の特性も関係するが,これを実効的に標準化し,通信伝送系だけの品質を表示したものが伝送品質である。具体的には原器ともいうべきある基準伝送系を定め,それと実際の通信伝送系との比較法により定量化する。これには表に示すような,明りょう度等価減衰量(AEN。articulation reference equivalentの略)や通話当量(RE。reference equivalentの略)などの評価尺度がよく用いられている。
執筆者:秋山 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報