直線上の区間I=[a,b]の長さはb-aであるが、これを|I|で表す。直線上の集合Eにつねに長さに相当するような量m(E)を定義できないかという問題がある。そのとき量m(E)(Eの測度という)は理想的には次の性質をもつことが望ましい。
(1)m(E)≧0はすべての集合Eに定義され、
(2)Eが区間Iのときは
m(I)=|I|
(3){En}が互いに共通部分をもたないとき、
(4)集合Eをaだけ平行移動することをa+Eで表すと、
m(a+E)=m(E)
しかし、このような測度を、すべての集合に定義することはできないことがわかっている。ルベーグは、Eをまず可算個の区間の列{In}で覆い(つまり
とする)、
を考える。Eのいろいろな覆い方のうち、(*)の最小値をm*(E)で表し、Eの外測度という。外測度は任意の集合Eに対して定義されており、
m*(E)≧0, m*(∅)=0
(∅は空集合)
E⊂Fならばm*(E)≦m*(F)
など、大きさを測る量としての基本的な性質をもっているが、集合E、Fが共通部分をもたないときでも、
m*(E∪F)=m*(E)+m*(F)
(加法性)
とは限らない。そこで、任意の集合Aに対し、
m*(A)=m*(A∩E)+m*(A∩Ē)
が成立する集合Eを可測集合といい(ĒはEの補集合)、
m(E)=m*(E)をEの測度と定義する。すると、m*(E)=0ならばEは可測集合、また、開集合や閉集合などの基本的な集合はすべて可測集合になる。このように、測度を可測集合の族Mだけで考えることにすると、測度は前述の(1)~(4)の性質をもつ。
測度の概念は次のように抽象化することができる。任意の集合Xをとり、その部分集合のある族Mを考える。Mの要素E∈Mに、負にならない数m(E)が定義されて、これが前に述べた(1)~(3)を満足するとき、E∈Mを可測集合、m(E)をEの測度といい、これらをひとまとめにして{X,M,m}を測度空間という。測度空間が与えられると、そこで定義された関数にルベーグ積分を定義することができるが、ルベーグ積分のよさは、測度空間の完全加法性による。測度空間で、とくに全空間Xが測度1をもつとき、確率空間といい、確率論はここで展開される。最後に、集合Xが位相群のとき、a,b∈Xの積をabと書くとき、前述の(1)から(3)までと、(4)のかわりに、
(4)′m(a-1E)=m(E)
を要求した測度をハールの測度といい、位相群のうえで解析学をするのに重要な役割をする。
[洲之内治男]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
平面上の簡単な図形は面積が定義される。一般に,平面上の点集合Aが面積をもつときに,その面積を|A|と書くことにする。集合A1,A2,……,Anがいずれも面積をもち,どの二つも互いに交わらないならば,それらを合併した集合A=A1∪A2∪……∪Anも面積をもち|A|=|A1|+|A2|+……+|An|となる。しかし,集合の無限列A1,A2,……,An,……については,このことは成り立たない。直線上の図形の長さ,空間図形の体積の概念についても同様なことがいえる。
20世紀の初めにH.ルベーグは,測度と名付ける次のような概念を導入して,その具体的構成法を与えた。すなわち,集合Aの測度μ(A)とは,長さ,面積,体積の概念の拡張であって,可算無限個の集合A1,A2,……,An,……が測度をもちどの二つも交わらないならば,それらの合併集合A=A1∪A2∪……∪An∪……も測度をもちとなるものである。この性質を完全加法性,または可算加法性という。この測度を現在ではルベーグ測度と呼ぶ。このような測度の概念を用いて定義される積分をルベーグ積分という。ルベーグ積分においては,測度の可算加法性のおかげで,従来の面積や体積を用いて定義された積分(リーマン積分)よりも極限操作などがはるかに容易になり,ルベーグ積分論は20世紀の解析学に目覚ましい発展をもたらした。
→積分論
執筆者:伊藤 清三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…西洋近代の5線記譜法では,視覚的便宜をはかって,拍のまとまりごとに縦線が引かれている。これを小節線bar,bar‐lineといい,これによって仕切られた1区画を小節bar,measureという。一つの小節は拍子の1単位に相当し,原則として小節線のすぐ後の拍(第1拍)が強拍(下拍ともいう)にあたる。…
…自然数aが自然数bを割りきるとき,aはbの約数であるという。たとえば,13は52の約数である。aがbの約数であるとき,bはaの倍数である。多項式f,gに対しても,fがgを割りきるとき,fはgの約数であるという。【杉江 徹】…
…すなわち, P(A)=P(A1)+P(A2)+…… こうした性質をもつ組(Ω,B,P)を確率空間と呼び,数学的な議論が展開される場となる。ここでPは解析学で測度といわれているものにほかならないが,P(Ω)=1となる特別な測度である。 例2 二つのさいを投げたとき,目の出方は6×6=36通りある。…
※「測度」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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