朝日日本歴史人物事典 「佐藤藤右衛門」の解説
佐藤藤右衛門
生年:天明3(1783)
幕末の篤農家,ウンカ(浮塵子)類の注油駆除法の実験者。筑前国(福岡県)夜須郡曾根田村生まれ。名は久真。8代目藤右衛門を名乗る。父藤市のあとを継ぎ曾根田村,三牟田村の庄屋を勤め,退役後は甘木村の入庄屋となる。天保13~15(1842~44)年,水苗代に油(菜種油,鯨油)を注いでウンカ類の駆除試験を行い,『蝗除試仕法書』(1845)を著し,近隣地域の指導者層や篤農家に回文した。なお「蝗」はイナムシと訓じ,ウンカを主とする稲の害虫の総称である。本書は近年活字化され,先駆的な実験報告書として高い評価を受けている。また,畏敬する同郷の儒者貝原益軒の『君子訓』全3巻を初めて上木し,諸方に献呈した。<参考文献>小西正泰・安川巌「『蝗除試仕法書』解題」(『日本農書全集』31巻)
(小西正泰)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報