筑前(読み)チクゼン

デジタル大辞泉 「筑前」の意味・読み・例文・類語

ちくぜん【筑前】

旧国名の一。現在の福岡県北西部にあたる。古くは筑紫つくしの一部。

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精選版 日本国語大辞典 「筑前」の意味・読み・例文・類語

ちくぜん【筑前】

  1. 西海道一一か国の一つ。文武天皇二年(六九八筑紫国から分かれて一国となる。古代からの大陸文化流入の地で、国防上の要地でもあるため、西海道諸国を管轄する大宰府が置かれた。鎌倉初期に守護武藤氏が大宰少弐となり、鎌倉後期には大宰府に代わる鎮西探題が置かれて北条氏の支配となる。室町時代は大内・大友氏が支配、江戸時代は福岡・秋月の二藩が置かれた。明治四年(一八七一)の廃藩置県後、黒田・秋月の二県となり、同年合併して福岡県の一部となる。筑紫(つくしのみちのくち)
    1. [初出の実例]「詔。筑前国宗形。出雲国意宇二郡司。並聴任三等已上親」(出典:続日本紀‐文武二年(698)三月己巳)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「筑前」の意味・わかりやすい解説

筑前(町)
ちくぜん

福岡県中部、朝倉郡(あさくらぐん)にある町。2005年(平成17)、朝倉郡三輪町(みわまち)、夜須町(やすまち)が合併して成立。町の北西部は三郡山地(さんぐんさんち)、北東部は古処山地(こしょさんち)の各末端の山々が連なり、その間にあたる北部山地は夜須高原とよばれる。これら山地に発して、南西に流れる山家(やまえ)川、曽根田(そねだ)川、草葉(くさば)川などが扇状地を形成し、町域の南部から南東部にかけて、筑後平野の北部にあたる平坦地が広がる。国道386号が北西―南東方向に町域を横断、北西端部で国道200号が交差する。また南端部を甘木(あまぎ)鉄道(レールバス)、国道500号がかすめる。平野部を中心に米・麦・大豆の普通作を基本とした農業地帯であったが、兼業化が進み、また福岡市や久留米市への通勤者も多い。安野焼、博多織、ナシ、カボスに似た柑橘類の「木酢(きず)(博多きずんこ)」などが特産品。夜須高原には県立夜須高原記念の森や国立夜須高原青少年自然の家が整備される。弥生時代から古墳時代の東小田峯遺跡(ひがしおだみねいせき)から出土した甕棺に収められていた鉄剣など7点は国指定重要文化財。焼ノ峠古墳(やきのとうげこふん)、仙道古墳(せんどうこふん)(装飾古墳)は国指定史跡。神功皇后伝説にまつわる社伝がある大己貴(おおなむち)神社に隣接して、神話を題材とした遊具などを備えた「歴史の里公園」が整備されている。1919年(大正8)南部に陸軍の大刀洗飛行場(たちあらいひこうじょう)が開港。1940年(昭和15)には陸軍飛行学校が併設され、第二次世界大戦末期には特攻基地ともなった。1945年3月の空襲では勤労動員の学生をはじめ、飛行場を含む周辺一帯で1000人以上の犠牲者を出した。1987年、恒久平和を祈念し、戦時中の資料を展示する大刀洗平和記念館が開館。面積67.10平方キロメートル、人口2万9591(2020)。

[編集部]


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改訂新版 世界大百科事典 「筑前」の意味・わかりやすい解説

筑前[町] (ちくぜん)

福岡県中部,朝倉郡の町。2005年3月三輪(みわ)町と夜須(やす)町が合体して成立した。人口2万9155(2010)。

筑前町南東部の旧町。朝倉郡所属。人口1万2598(2000)。筑紫(つくし)平野の北端に位置し,東は朝倉市,南西は小郡市に接する。町域の大半は筑紫山地南西麓の扇状地で占められる。南部から大刀洗町にかけての一帯は〈筑後川の戦〉として知られる南北朝期の合戦場跡であり,第2次大戦前まで航空基地があった。主産業は農業で,米作を主体に山麓部でブドウ,平地でイチゴの栽培が行われる。良質の水に恵まれ豆腐類の生産が盛ん。山麓には仙道古墳(史)など多くの遺跡が分布する。甘木鉄道線が通じる。

筑前町北西部の旧町。朝倉郡所属。人口1万6328(2000)。筑紫平野北端に位置し,北東部は砥上(とがみ)岳などの筑紫山地,中部は筑後川水系の曾根田川などの小河川が形成する扇状地からなる。西部は筑紫野(ちくしの)市に接する。古くから開けた地で,町域一帯に焼ノ峠古墳(史),観音塚古墳など多くの古墳が分布する。南部を古代の官道が通り,長者町付近には隈崎駅があったといわれる。農業が基幹産業で,米麦作を主に,野菜栽培,畜産などが行われ,近年は花卉のハウス栽培も盛んである。JR筑豊本線,国道386号線が南部を通り,福岡市への交通の便もよく,通勤者が増えている。北東部の山地一帯は夜須高原と呼ばれ,有明海,雲仙岳などが一望できる。
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