作者を探す六人の登場人物(読み)さくしゃをさがすろくにんのとうじょうじんぶつ(その他表記)Sei personaggi in cerca d'autore

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

作者を探す六人の登場人物
さくしゃをさがすろくにんのとうじょうじんぶつ
Sei personaggi in cerca d'autore

イタリアの劇作家ピランデッロの喜劇。3幕。1921年発表。ピランデッロ作『役割の遊戯』の稽古(けいこ)にかかろうとする俳優たちの前に、父、母、父違いの娘、息子、少年、少女ら家族6人の「登場人物」が作者を求めて現れる。それは一家の悲惨な事件を劇化してもらい、彼らの存在理由を確認するためである。演出者の同意のもと、彼らは事件の経過を説明していくが、現実を舞台化できると信じる俳優たちと、演技による現実の再現に不信を抱く「登場人物」の間に葛藤(かっとう)が絶えない。事件が明らかになるや、ピストルの発射音、そして「少年」の死により6人の計画は挫折(ざせつ)、舞台は急速に幕を閉じる。市民的モラルに衝撃を与えるとともに、現実の劇化の不可能性、言語と行為の非伝達性を提示するこの戯曲は、ジョルジュ・ピトエフ演出によるパリ上演(1923)以後、世界各国で翻訳上演され、現代の実存的不条理演劇の先駆けとなった。

[里居正美]

『岩田豊雄他訳『ピランデルロ名作集』(1958・白水社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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