日本大百科全書(ニッポニカ) 「使者たち」の意味・わかりやすい解説
使者たち
ししゃたち
The Ambassadors
アメリカの小説家ヘンリー・ジェームズの長編小説。1903年刊。パリに遊んで家業を継ごうとしないアメリカ青年チャドを連れ戻す目的で、母親ニューサム夫人から送られた使者ストレザー自身が、パリに魅せられ、充実した生のためにチャドをその地にとどまらせようと努める。業(ごう)を煮やしたニューサム夫人は、2人目の使者として娘セアラを送り込む。夫人の信頼を失ったストレザーはふとしたことから、チャドと彼の洗練に貢献のあった魅力あるマダム・ド・ビオネとの関係の正体を知り、二重の幻滅を味わう。深刻なコメディを、ストレザーの視点を通して緻密(ちみつ)な文体で描く、ジェームズ円熟期の代表作。
[岩瀬悉有]
『工藤好美・青木次生訳「使者たち」(『世界文学全集26』所収・1968・講談社)』