改訂新版 世界大百科事典 「例名」の意味・わかりやすい解説
例名 (れいみょう)
平安末期から中世にかけてみられた,所領(荘園,免田)の単位を示す土地制度上の用語。あらたに設定された所領単位ではなく,以前から存在し,公的に認められていた所領単位であるという意味。実例としては,(1)薩摩国新田神社の常見免田,(2)播磨国矢野荘の例名,などが知られるのみで,あまり一般的な用語ではないようである。新田神社の例名(常見免田)は,古くから国衙から認められて神社の用途にあてられてきた免田(名)という意味で用いられている。矢野荘の場合は,1167年(仁安2)に,以前から同荘の本家であった美福門院得子(鳥羽后)が,同荘の一部を,その御願寺である歓喜光院に寄進したが,そのとき,歓喜光院に寄進された分は,荘田の一部を特別に切りあてられたので別名(べちみよう)とよばれ,残りの荘田は,それに対して,従来どおり美福門院が領有したので,例名とよばれた。それ以後,例名と別名とは別々の荘園領主をもつこととなった。
執筆者:中野 栄夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報