債務危機(読み)さいむきき(その他表記)debt crisis

翻訳|debt crisis

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「債務危機」の意味・わかりやすい解説

債務危機
さいむきき
debt crisis

国が政府債務返済できない状態。政府の税収が長期にわたって支出を下回ると,国が債務危機に陥る可能性がある。どの国においても,政府は主として課税による資金調達で支出をまかなう。税収が不足した場合,政府は債券を発行して不足分を埋め合わせる。これは主として,公開市場(→債券市場)で政府債券を投資家に売ることによって行なわれる。評価が良好で債務の少ない政府や堅実な債務返済実績のある政府は,債券を引き受ける投資家をみつけるのにさほど苦労しない。しかし,政府の債務負担が大きくなりすぎると,投資家は政府の返済能力に不安をもち始め,高くなったリスクを補うために金利の引き上げを要求するようになる。その結果,政府にとっては借入費用が上がる。時間の経過とともに投資家の信用がさらに低下すると,借入費用はますます高くなり,政府は既存の債務の借り換えができず,ついには債務不履行をきたし債務危機に陥る。
債務危機は多くの国が経験している。例として,1980年代のメキシコに端を発するラテンアメリカの債務危機(→失われた十年)や,2009年に始まったヨーロッパの政府債務(ソブリン債)危機などがある。(→累積債務問題

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知恵蔵 「債務危機」の解説

債務危機

発展途上国の政府 ・ 公的部門が海外から外貨で借入した債務が累積し、元利金の支払いが不能になって(債務不履行)、国内で急激な経済不況や社会不安が生じたり、国際的な金融不安が高まること。一般に、輸出額に対する元利返済額の比率(DSR=デット・サービス・レシオ)が20%を超えると危険水準に陥るといわれる。対外借入は貿易赤字や開発資金需要を補填するために行われるが、債務の返済が順調であれば、借入それ自体は問題ではない。だが、石油危機契機に世界経済が長期的に低迷する中で、1982年8月にメキシコで債務危機が発生し、その後、ペルーブラジルにも波及して、国際社会に大きな衝撃を与えた。

(室井義雄 専修大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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