ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「累積債務問題」の意味・わかりやすい解説
累積債務問題
るいせきさいむもんだい
accumulating debt problem
途上国の経済危機は 1982年8月,メキシコが対外債務返済不能に陥ったのを契機に表面化した。原因としては,1973年の石油危機での原油価格高騰により発生した大量のオイルマネーが,欧米諸国の銀行を経て途上国に流れたことがあげられる。開発援助を必要としていた途上国は,銀行にとって賢明で安全な投資先と考えられ,安易な借り入れ,貸し出しが 1970年代後半まで続いた。しかし,1979年の第2次石油危機が欧米諸国の景気後退をもたらし,1980年代に入るとアメリカ合衆国に端を発した金利高騰,ドル高,途上国の主要輸出品である一次産品価格の下落などから債務国の資金繰りが悪化し,問題の表面化にいたった(→失われた十年)。
この問題に対しては当初,債務不履行を防止するための短期的な措置を中心とした取り組みが行なわれた。国際通貨基金 IMFと世界銀行は債務国に対して構造調整を条件に融資を行ない(→構造調整ファシリティ),途上国は債務返済のため緊縮財政に取り組むなどして多大な犠牲を払った。しかし,多くの途上国で解決にはいたらず,債務問題は長期的な現象であることが明らかとなった。このため 1996年には条件付きで債務免除や削減を認める重債務貧困国(HIPC)イニシアチブが開始された。しかし,一部からは,この救済措置も以前の構造調整と同様であるとの批判の声があがり,21世紀に入ると非政府組織 NGOなどによる債務帳消し運動が行なわれた。世界銀行によると 2010年の途上国の対外債務総額は約 4兆ドルで,これらの国の国民総所得 GNIの 21%を占めた。
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