元禄検地(読み)げんろくけんち

改訂新版 世界大百科事典 「元禄検地」の意味・わかりやすい解説

元禄検地 (げんろくけんち)

寛文・延宝検地につぐ江戸時代中期の検地通例は5代将軍徳川綱吉の政権下(1680-1709)で実施された江戸幕府の検地をさす。1683年(天和3)の越後高田(旧,松平光長領)に対する検地がその最も早い例であり,以下上野沼田(旧,真田領),陸奥窪田(旧,土方領),信濃高遠(旧鳥居領),出羽幕領(旧,米沢藩預地),関東幕領,佐渡幕領,備中松山(旧,水谷(みずのや)領),飛驒高山(旧,金森領),備後福山(旧,水野領),大和松山(旧,織田領)などを対象とする検地が行われた。元禄検地の特色の一つは,関東幕領のように地方(じかた)直しとの関連で実施された検地のほかに,大名の改易・転封による支配関係の変動に伴った検地がなされている点である。元禄検地が一斉に実施されなかったのはそのためである。また幕府は,小規模な検地については幕府代官に担当させたが,旧大名領のような広域の検地に関しては,延宝総検地の場合と同様に近隣諸藩に実施させる方式をとった。検地の基準となったのはいわゆる元禄検地条目27ヵ条(高遠検地より採用)である。この条目は延宝検地の原則をおおむね踏襲したものであり,1反を300歩とし,間竿は1間を6尺1分とした2間竿を使用すること,田畑位付けは上中下に上々,下々を加えた5段階とすることなどをはじめ,詳細な施行細目を規定したものであった。検地はこの条目に基づき,担当諸藩の手で進められたが,最終的な石盛・石高の決定については幕府がその権限を握っていたようである。検地の結果をみてみると,綿密な査検によって土地の生産力と実態が再把握された一方で,旧高に比して新検高の著しい増加がみられる。その打出し部分は,結局は幕領の石高増加に結びつくものであり,また検地による表高改変の差異は,表高によって知行を付与される大名・旗本の財政基盤に直接影響をもたらすものであった。さらにこの領主財政への圧迫がひいては農民収奪の強化に結果している場合もしばしばみられるところである。なお,元禄検地以降,新田検地を除いては本格的な幕領検地が実施されることはなかった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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