朝日日本歴史人物事典 「八尾朝吉」の解説
八尾朝吉
明治期の侠客。本名岩田浅吉。マッチ工場や豚毛ブラシ製造によって阪神間に軽工業が勃興した時代,穀倉地帯の河内(大阪府)八尾で育ったローカルな親分である。草相撲の大関を張った体力と度胸の良さを買われて,飛田遊廓を稼ぎ場とする吉岡組に入った。遊女の足ぬけ(逃亡)を手伝ったり,高利貸を殴ったりしたことから,地元の八尾ではなかなか評判がいい。刃物や銃器に頼らず素手喧嘩をやり,また縄張り拡大の意志もなかったようだ。今東光の長編小説『悪名』の主人公となった。三音家小浅丸の河内音頭「朝吉喧嘩鳥」もある。
(平岡正明)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報