公債国家(読み)こうさいこっか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「公債国家」の意味・わかりやすい解説

公債国家
こうさいこっか

歳入に占める公債収入(公債金)の比率が高く、かつ国民経済の規模(たとえば国内総生産:GDP)に対する国家債務の比重が大きい国家財政ないし国家をいう。資本主義国家は、国家が大きな財産をもち、かつそれを運用して収益をあげる有産国家であってはならず、国家経費は租税をもってあてる租税国家でなければならぬという方向を示したのは、アダムスミスであった。彼もしかし、戦時などの臨時的経費にあてるための公債発行は認めていた。しかし、大恐慌以後、そしてとくに第二次世界大戦以後、財政支出の規模拡大によって有効需要を刺激し、不況失業を救済しようとする財政政策が主要資本主義国で採用されるようになった結果、消費税などの大衆課税をもってしても歳入不足となり、公債発行額が急増した。これが公債国家成立の主原因である。現在のアメリカなどはその典型であり、日本も1965年度(昭和40)の赤字公債発行をもって公債国家への第一歩を踏み出し、第一次オイル・ショック(1973)以後、公債発行高が急速に増えたため、いまや世界有数の公債国家になっている。2020年度(令和2)末で、公債残高は約947兆円にも達している。

[一杉哲也・羽田 亨 2022年6月22日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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