共同フロート(読み)きょうどうフロート(英語表記)joint float

改訂新版 世界大百科事典 「共同フロート」の意味・わかりやすい解説

共同フロート (きょうどうフロート)
joint float

複数の国が相互間では固定為替相場制調整可能な釘付け相場制)を採りながら,他国通貨に対しては全体として変動為替相場制を採ることを指す。1971年末のスミソニアン合意に伴ってIMF国際通貨基金)加盟国間の為替相場変動幅が上下各21/4%,計41/2%に拡大されたが,1970年末から域内通貨の変動幅縮小を計画していたEC(ヨーロッパ共同体)は,72年4月,加盟6ヵ国通貨間の変動幅を基準相場の上下各11/8%,計21/4%とする縮小変動幅の取決めを実施した。IMFの定めた41/2%のトンネル内を21/4%幅のEC通貨群が蛇行するので,この取決めは〈トンネルの蛇〉と呼ばれた。しかし73年3月にEC諸国が域外通貨に対して変動相場制を採用したためトンネルは消滅し,EC共同フロートが発足した。トンネルの蛇および共同フロートへの参加国・離脱国の推移はめまぐるしく,78年ころには西ドイツと周辺諸国のみのミニ共同フロートに矮小化したため,ヨーロッパ通貨統合の推進を目ざすECは79年3月,イギリスを除く8ヵ国の参加を得てヨーロッパ通貨制度EMS)を発足させることとなった。EMSでの変動幅は上下各21/4%(イタリアのみ各6%)であるが,EMS発足後も基準相場の調整が頻繁に行われ,主権国家間の通貨統合がいかに困難であるかを示している。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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