日本大百科全書(ニッポニカ) 「共役塩基」の意味・わかりやすい解説
共役塩基
きょうやくえんき
conjugate base
デンマークのブレンステッドの酸塩基理論によってヒドロン(陽子プロトン1H+と重陽子ジュウテロン2H+=2D+を含むすべての水素イオン)H+を受け取る側となる物質。ヒドロンを与える側はその塩基の共役酸となる。ブレンステッドの酸塩基理論では、酸とはH+を相手に与えるような分子あるいはイオン、塩基とは相手からH+を受け取るような分子あるいはイオンと定義され、酸と塩基は互いにH+を間にして共役する関係にある。この定義に従うと、酸HAが塩基として作用する水H2Oに溶けると、H+は2対の共役酸塩基の間を移動する。
この解離平衡式で右から左への反応に注目すれば、H3O+がA-にH+を与えている。ここで、A-はHAの共役塩基、HAはA-の共役酸であり、H3O+はH2Oの共役酸、H2OはH3O+の共役塩基である。 の第一と第二の例では、水が相手しだいによって酸にも塩基にもなりうることがわかる。第四の例は水の自己酸塩基解離である。
[岩本振武]