知恵蔵 「内村航平」の解説
内村航平
中学卒業と同時に、塚原直也に憧れて朝日生命体操クラブに入門。東洋高等学校を経て日本体育大学体育学部体育学科に入学。2007年、ユニバーシアード団体優勝及び、種目別ゆかで優勝。08年には初めてオリンピックに出場し、男子体操団体で日本の銀メダル獲得に貢献するとともに、個人総合でも銀メダルを獲得。体操の10代では日本初。同年、全日本選手権個人総合優勝。
その後、世界体操競技選手権の09年ロンドン、10年ロッテルダム、11年東京と3大会連続の個人総合優勝。通算3度の優勝は女子のスベトラーナ・ホルキナ(ロシア)と並び最多。また、11年の東京大会では同時に「ロンジン・エレガンス賞」を受賞しており、本人にとって金メダル以上の喜びであった様子。
11年春に大学を卒業し、現在(12年8月)はコナミ体操競技部に所属。
12年、ロンドン・オリンピックは団体総合予選、団体決勝、個人総合ともに全6種目、加えて種目別ゆかに出場。初めの団体総合予選では、あん馬で着地が乱れるなど出だし好調とはいかなかったものの、個人総合で金メダルを獲得。これは、日本人選手として具志堅幸司以来28年ぶりの快挙。また、オリンピックと世界体操競技選手権の両方を制した初の日本人となった。同大会では、加えて得意のゆかで銀メダルを獲得。抽選で1番手の演技となり、ウォーミングアップが出来ないということで、最高G難度の大技「リ・ジョンソン(後方かかえ込み2回宙返り3回ひねり)」は封印しての演技だったが、オリジナルの連続技等で同じ難度点をとり、また、美しさを評価するEスコアはトップだった。本人の目指す「美しい体操」が確かに評価されている。「結果ではなくて、表現したいもの、理想の体操が自分のなかにはある。でも、それができても、終着点ではないかも知れない」と話す言葉からは、芸術家のような空気が感じられる。
あん馬が苦手と評されることもあるが、「それがあったから、あん馬は頑張ってきた」という、大きく劣る種目のないオールラウンダーであり、それぞれ優勝を狙えるレベルの力を持つ。また、優勝を重ねても、さらに上のレベルの演技を目指し人一倍の練習を重ねる努力家。私生活では、野菜嫌いでお菓子好きといった横顔も持つ。
(菘(すずな)あつこ フリーランス・ライター / 2012年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報