APEC(読み)えーぺっく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「APEC」の意味・わかりやすい解説

APEC
えーぺっく

アジア太平洋経済協力Asia-Pacific Economic Cooperationの略称。アジア太平洋経済協力会議ともいう。アジア太平洋地域は、貿易投資技術移転などを通じて相互依存を深め、高い経済成長を続けてきたが、他方では、アメリカ市場への過度の依存や、経済発展のための基盤が弱いといった問題を抱えている。このような問題を解決して地域の持続的な経済発展を図るという目的のもとに、相互の協力の場として発足したのがAPECである。

 当初の参加国は、日本、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国(大韓民国)、当時のASEAN(アセアン)(東南アジア諸国連合)6か国(タイ、インドネシアマレーシア、フィリピン、シンガポールブルネイ)の計12か国、第1回の閣僚会議は、1989年オーストラリアのキャンベラで開催された。その後91年に、中国、台湾、香港(ホンコン)が参加、さらに93年11月のシアトル首脳会議でメキシコパプア・ニューギニアが加盟、94年にチリが加盟、98年にロシア、ペルー、ベトナムが加盟した。

 APECの理念は、アジア太平洋地域において「開かれた地域協力open regionalism」を推進し、多様性に配慮しながら、各国の経済成長を持続させることであり、その実現を目ざして多角的な自由貿易体制を強化していくこととされている。この理念のもとに、貿易、投資、技術移転、人材開発など分野別の協力プロジェクトが選定されている。94年の閣僚会議では、先進国については2010年までに、途上国については2020年までに貿易・投資の自由化を目ざすというボゴール宣言が採択され、95年の大阪会議では、それを具体化する行動指針が採択されるなど、その活動は本格化している。なお、APECでは加盟した国や地域をメンバー・エコノミーMember Economiesと称する。

志田 明]

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