日本大百科全書(ニッポニカ) 「あん馬」の意味・わかりやすい解説
あん馬
あんば
pommel horse
体操競技における男子器械種目の一つ(あん馬運動)。また、その器械名。あん馬は馬の鞍(くら)を模した器械のことをいい、二つのポメルpommel(把手(はしゅ/とって))を備え、長さ160センチメートル、幅35センチメートルの馬体、ポメル、脚部からなる。床面からの高さは115センチメートルで、使用するマットの厚さは10センチメートルである。
演技は、一連の動作の流れのなかで、途中で静止することなく馬体の3部分(左右の馬端および中央の鞍(あん)部)を使用して閉脚もしくは開脚での両脚旋回を中心に脚の交差、振動(体を振る)などを組み合わせて行う。
あん馬は古代ギリシアあるいは古代ローマ時代に軍事訓練を目的とした馬術の基礎運動として行われていたとされ、体操競技の種目のなかでもっとも歴史が古い。初めはとび越し運動として行われたが、しだいに馬上における身体支配能力を養うことに主眼がおかれ、鞍部のポメルを握って片脚や両脚の動作、体の方向転換、横移動などの運動が行われるようになり、体操競技として発展してきた。現代では、さらにその技術が進歩し、難度の高い技の組合せと高度な安定性が求められている。1896年の第1回オリンピック・アテネ大会よりオリンピック種目(種目別)となった。
[三輪康廣・後藤洋一 2020年2月17日]