日本大百科全書(ニッポニカ) 「初切り」の意味・わかりやすい解説
初切り
しょっきり
花相撲(はなずもう)、引退相撲、地方巡業興行などで余興として演じる滑稽(こっけい)相撲のこと。江戸勧進相撲が盛んになってきた貞享(じょうきょう)~元禄(げんろく)(1684~1704)のころに、本相撲の取組を始める前に、四十八手の技(わざ)を2人の力士が実演して解説したもので、序幕(ことはじめ)の意味で、初切りといった。「初っ口」と同じ意である。相撲の四十八手の技を組み合わせて連続に行い、2番か3番で勝負をつける。行司は、始める前に、その手さばき(技)の順序を口上(こうじょう)で、おもしろおかしく説明した。江戸時代は、巡業番付下に2組の力士の名を別欄で記し、客寄せの看板にして、相撲技の変化を巧みな取り口で、次々と曲芸のようにみせて、見物人に相撲技を解説するのが目的であった。明治ごろから、しだいに滑稽な動作を、おもしろおかしく演じるようになり、いまでは幕下力士が1組2人で出場し、相撲の技をみせることより、むしろおどけた興味本位を目的とする初切り相撲になってしまった。
[池田雅雄]