改訂新版 世界大百科事典 「勇敢な仕立屋」の意味・わかりやすい解説
勇敢な仕立屋 (ゆうかんなしたてや)
Das tapfere Schneiderlein
《グリム童話》20番の話。ちびの仕立屋がパンに群がるハエを布でたたくと7匹殺せたので,一打7匹と書いた帯をつくって町に向かう。大入道と出会い,力試しをし,だまして勝つ。宮殿の庭で寝ていると,一打7匹の帯を見た王に召し抱えられる。しかし武将たちにねたまれ,森の巨人退治を命じられるが,知恵で巨人たちを相打ちさせて倒す。次に森の一角獣を倒すこと,第3に猪を倒すことを命じられて,知恵で成功する。王はやむなく約束どおり王女と結婚させるが,仕立屋が寝言でズボンをつくろえなどと言うので,正体が暴露されそうになる。しかし,仕立屋に好意をもつ家来の忠告で,仕立屋は王たちが寝室の外で自分のようすをうかがっているのを言い当てて退け,王になる。
この話は,一打7匹をはじめ,仕立屋が巨人をだまして勝つさまざまなモティーフを結合させてつくられている。巨人が石から水をしぼり出したのに対し,仕立屋がチーズから水をしぼり出すモティーフは,アイルランドからカフカスまでの全ヨーロッパと,東はペルシアまで広く分布している。
執筆者:小澤 俊夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報