改訂新版 世界大百科事典 「勝扇子」の意味・わかりやすい解説 勝扇子 (かちおうぎ) 写本1巻。1708年(宝永5),江戸に下った京都の興行師小林新助が,薩摩小源太一座の人形浄瑠璃を房州で興行したところ多数の賤民に襲われ,芝居を取りつぶされた。小源太らはただちに訴訟を起こし,芝居に携わる者は賤民に属するか否かをめぐって吟味が重ねられた末,同年6月〈歌舞伎役者は則神楽として之在り候,又人形浄瑠璃も賤敷者にて之無く……此度房州に於てえた徒党致候段,近頃不届〉との判決が下された。新助をはじめ芝居の人びとは,これを公的な身分保証と受け取って喜んだ。2世市川団十郎は,新助の公事日記を写し,《勝扇子》と題して家蔵。5世団十郎もそれを転写して後に伝えた。執筆者:今尾 哲也 出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報 Sponserd by