包括適応度(読み)ほうかつてきおうど

百科事典マイペディア 「包括適応度」の意味・わかりやすい解説

包括適応度【ほうかつてきおうど】

社会生物学用語。個体ではなく特定の遺伝的形質に着目した場合の適応度。W.D.ハミルトンが1964年に提唱。特定の遺伝子をもつ個体の適応度と,その遺伝的形質が近縁者の適応度に及ぼす効果の和として表される。包括適応度が1より大きければその形質は進化する。例えば自分犠牲にして他個体を救う利他的行動において,その対象兄弟姉妹(確率的に1/2の遺伝子を共有する)の場合,もしその行動によって2個体より多くの個体を繁殖させることができれば,この形質は自然淘汰を生きのびる。
→関連項目社会生物学利己的遺伝子

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知恵蔵 「包括適応度」の解説

包括適応度

現代進化論の基本概念。適応度は自然淘汰における成功尺度で、個体が残せる子の数で表されるのに対して、包括適応度は遺伝子レベルでの成功の尺度で、血縁者を通じて残される子の数も含める。W.D.ハミルトンが社会性昆虫の利他行動の進化を説明するために提唱したもの。女王バチが産んだ子と働きバチの遺伝子の半分が共通しているため、働きバチが女王バチの子を育てるのと自分の子を育てるのとは包括適応度からみれば等価になる。この概念をもとに、J.メイナード=スミス血縁淘汰説を提唱した.

(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2007年)

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世界大百科事典(旧版)内の包括適応度の言及

【個体】より

…淘汰は個体にでなく,個体の集団に作用するというのである。しかし最近では,群淘汰の説明は理論的には困難であり,血縁淘汰,包括適応度というような新しい概念を導入すれば,淘汰は個体に働くと考えたほうがより合理的に説明ができることが強調されている。この考え方,すなわち個体淘汰という考え方に立ったとき,植物の個体性も含めて,個体ないし個体性というものを再検討してみる必要があろう。…

※「包括適応度」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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