医史学(読み)いしがく(その他表記)medical history

翻訳|medical history

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「医史学」の意味・わかりやすい解説

医史学
いしがく
medical history

原始時代から現代にいたるまでの医療,医学発達の過程,医業の成立,医療制度の変遷など,医療にかかわる事柄を経時的にとらえる学問。医の倫理のように,医療が職業として成立した時点から現代まで,その底流に一貫して流れる倫理観をきわめることも,この学問の任務である。現代医学はおびただしく分化して全体像を把握しにくくなっており,また医療制度の面では,現代ほど多くの矛盾をかかえ,将来への不安がみられた時期はかつてなかった。こうした状況のなかでは,これまでの経過を知り,現状を的確に理解することが,将来の発展のために欠くべからざるものとなっている。さらに,現代医学はいわゆる西洋医学の流れをくむものであるが,難病といわれるものや不定愁訴など,現代医学で治療しにくい病状に,伝統的な東洋医学の適用の必要性が唱えられている。伝統医学を正しく理解し,活用するためには,その発達史を知る必要がある。これも医史学の領域に属するものである。このように,医学だけでなく,医にかかわるあらゆる分野を対象とすることから,富士川游以来この領域の学問を医学史と呼ばず,医史学と呼称している。

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