文化が原始的な状態にあった時代、もしくは人間が原始的な生活を営んでいた時代をいう。原始的というのは、日本でも中国でも英語のprimitiveの訳語であって、元来、「最初の」「初期の」の義であるが、遠古の人々の程度の低い文化を形容する場合にも、近代の未開民族の文化や社会をさす場合にも使用され、その意味でそれは歴史学の概念ではなく、社会学の用語なのである。したがって歴史のある時代ないし歴史上のある社会を規定するのにこの形容詞を用いることは、適切とはいいがたい。日本では大和(やまと)時代以前の時代を神代とか先史時代といっていたが、第二次世界大戦後、それらの看板を塗り換え、原始時代や原始社会の語に置き換えられたが、それは深刻な思索によったのではなかった。日本の歴史を正しく体系づけるためには、「原始的」といった非歴史学的な概念を排除する必要がある。
[角田文衛]
歴史学上の時代区分。「原始時代」は人類がその誕生から,文字や金属器の使用,都市的・階級的な国家の成立などによって代表される古代文明の段階に到達するまでの時代をいう。日本ではほぼ縄文時代までがそれにあたる。これに対し「原史時代」は考古学上の時代区分で,先史時代と歴史時代との中間,信頼しうる文献史料の少ない時代をいう。日本では弥生中期~古墳時代がそれにあたるが,概念としては現在ほとんど用いられない。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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