改訂新版 世界大百科事典 「十界修行」の意味・わかりやすい解説
十界修行 (じっかいしゅぎょう)
修験道で峰中で行われる10種の修行をいう。《華厳経》に説かれている成仏過程である地獄,餓鬼,畜生,修羅,人,天,声聞,縁覚,菩薩,仏の10の段階のそれぞれに,修行者の五体が大日如来の五大と悟る座法である床堅(とこづめ),懺悔,修行者の犯した罪の重さを計る業秤,水断,水汲みの作法である閼伽(あか),相撲,延年,護摩のための木をあつめる小木(こぎ),穀断(こくだち),金胎(こんたい)の秘印をさずける正灌頂の10種の修行を充当し,峰入りの期間中にこの10種の修行をおさめおわることによって即身成仏しうると説明された。もっとも近代以降は十界修行が全体として行われることはなく,わずかに床堅,懺悔,業秤(のぞきの行),水断,閼伽,小木,延年,正灌頂などが断片的に行われているのみである。
執筆者:宮家 準
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報